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「欧州でも勝てる日本人指導者に」
宮沢悠生通訳の信頼構築術・後編。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byYuki Miyazawa
posted2020/05/28 11:40
ケルン、ザルツブルクで通訳を歴任した宮沢悠生氏。大迫勇也や南野拓実の飛躍は彼の力によるところもあるだろう。
成長スピードをできる限り可視化。
子どもたちの成長にはそれぞれの成長スピードがある。ザルツブルクでは成長スピードをできるだけ可視化し、重要視しているという。
子どもたちが、いつ、どこで、どのように加速度的に成長するかはわからない。だから、育成指導者にはその場のパフォーマンスやフィジカルレベルで判断せず、どうすればそれぞれが成長していけるかを見定め、我慢強く支える姿勢が欠かせない。
ただこのような「海外では○○」話をすると、「だから日本では△△」という話がついてきがちだ。しかし、それが定型文となることには違和感を覚える。
僕らは、正しく物事を理解して、前提条件から正しく受け止めることが大切だ。世の中、良い面と悪い面がある。どこでも良い人と悪い人がいる。僕にはドイツ人の友人がたくさんいるが、嫌な思いをしたこともたくさんある。それは、日本においても同様だろう。
日本のS級ライセンスも取得した。
宮沢も同意してくれた。
「海外はこうだから日本もこうしなきゃダメということは、絶対に言いたくありません。例えば『練習時間が長すぎる。だから日本はダメなんだ』とか。そういう言い方だけは、絶対に避けたいなと思っています。
2019年に日本でS級ライセンスを取得させていただきましたが、日本の指導者の方々もすごく考えているし、いろいろな努力、取り組みをされています。これまでに苦心された人々がいたからこそ現在の環境がある。そのことを肌で感じたんです。
『日本はこうしなければならない』とか、『海外がこうだからこうだ』みたいな言い方をしてしまうと、どうしても表面的なことだけになってしまう。そうなると自分が伝えたいメッセージも入っていかないと思っています」
日本には日本の良さがあり、他国には他国の良さがある。
両方を大事にしながら、目標達成のために必要なことは何か掘り下げる。サッカーだけでなく、人生の大切さを伝えられる指導者、子どもたちの“今”と“未来”に向き合えている指導者が、日本にもたくさんいるのだ。