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俊輔落選、中山・秋田選出から18年。
W杯の“ベテラン枠”論争に決着を。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2020/05/17 11:50
W杯で初めてゴールを決めた日本人である中山雅史は、2002年日韓W杯にサプライズ招集されチームに魂を吹き込んだのだ。
岡田武史は川口能活の立場を明示した。
4年後の南アフリカW杯では、岡田武史監督が「試合には出ない」選手を選ぶ。ケガによる長期の戦線離脱で代表から遠ざかり、メンバー発表時点でJリーグに出場していなかった川口を、第3GKとして招集したのである。チームのキャプテンにも指名し、「まとめ役」の立場を内外にはっきりと示した。
W杯開幕直前に先発から外れた楢崎と中村俊も、川口と歩調を合わせた。ドイツW杯の悔しさを知る彼らの献身性は、2度目のベスト16進出に欠かせないものだった。
'14年のブラジルW杯に臨んだアルベルト・ザッケローニは、“ベテラン枠”を用いなかった。長谷部誠、本田圭佑、岡崎慎司、長友佑都、川島永嗣ら’10年の南アフリカW杯を知る海外組を揃え、’06年に似たチームを編成している。
2年以上代表から遠ざかっていた大久保嘉人の招集は、サプライズと呼べるものだった。とはいえ、前年のJリーグ得点王は’02年の中山や’10年の川口のような立場ではなく、攻撃の活性化を期待されての選出だった。
西野朗は23人全員を戦力と考えた。
試合に出場しないベテランがいた'02年と'10年は揃って16強入りし、実力重視の選考で臨んだ'06年と'14年はグループステージで敗退している。W杯に臨むチームには“ベテラン枠”が不可欠といった意見が広がっていったなかで、’18年のロシアW杯は「試合に出ない選手」が選ばれていない。
それでも、西野朗監督が束ねるチームは、グループステージを2位通過して3度目の16強入りを果たした。決勝トーナメント1回戦では、ベルギーと歴史的な熱戦を演じた。
'10年と'18年のチームには類似点がある。大会前の評価が低かったのだ。それによってチームが結束したのは間違いない。日本人監督に率いられているのも共通点だ。一方で、’02年大会も含めた3つのチームに、明確な共通点はない。