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マンUの惨状を見て思い出す6人。
ファギーの雛鳥たちがいれば……。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2020/05/12 11:00
ファーガソン監督のもとで育まれたベッカム(右端)やギグス(左から3人目)らの雛鳥たち。彼らこそ“赤い悪魔”復権に必要な存在のはずだが……。
フィル、バットは物静かだけど。
強気で多弁な兄の影響か、P・ネビルはおとなしかった。
6人のなかでは最年少。とはいえ末っ子のような駄々はこねず、決して自己主張をしなかった。だからこそ左右のサイドバックで、中盤センターで、あるいは守備固めのサイドハーフで起用されても、常に及第点以上のパフォーマンスを披露できたのだろう。
試合の局面を変えるような活躍をみせても、メディアが喜ぶようなコメントは発しない。あくまでもチームファーストの姿勢を貫いた。当然、大衆人気もパッとしなかったが、組織を構成するうえでは黒子に徹するタイプも絶対に必要だ。
P・ネビル同様、バットも物静かな男だ。
家族を思いやり、友人へのサポートも惜しまない彼は、チームでいちばん愛されていた。悪戯好きのスコールズが何か仕掛けてきても、楽しそうにしている。G・ネビルと違って好戦的でもない。ひょっとすると毎朝、笑顔で目覚めていたのではないだろうか。
したがって彼もまた、メディアのヘッドラインを飾るタイプではなかった。ただし、2002年ワールドカップでは、「豊富な運動量と的確な状況判断で攻守をリンクしている。世界でも指折りの中盤センターだ」とペレが絶賛している。
当時イングランド代表監督を務めていたスベン・ゴラン・エリクソンも、必ずといっていいほどバットを招集。シーズン中に調子が落ちていても、だ。信頼の証に他ならない。
イニエスタも憧れたスコールズ。
スコールズはメディアが大嫌いだ。
極度の人見知り。見知らぬ者に取り囲まれて質疑応答? 絶対に嫌だと逃げまわる。筆者も専門誌の編集長時代に何回かインタビューを申し込んだが、ユナイテッドの回答はいつも同じだった。
「スコールズはメディアの取材に応じない」
しかし、ピッチに入ると人が変わる。シャイな男が肉食に変貌する。相手DFラインを前後左右に揺さぶるロングフィード。鋭いクサビ。パス・アンド・ムーブ。そして20~30mの強烈ミドル。まさに“小さな巨人”だった。
個人タイトルと縁遠かったからか、それともプレミアリーグが不当に低く評価されていた時代にピークを迎えたからか、日本における知名度はそれほど高くない。ただ、バルセロナで一世を風靡したシャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタが憧れた事実からも、スコールズの凄さはうかがい知れるだろう。
マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督も、「史上最もすぐれたミッドフィルダーのひとり」と絶賛している。