テニスPRESSBACK NUMBER
ランキング下位層はテニスの未来か。
BIG3の救済案とティームの異論。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/05/04 11:40
BIG3の救済案が話題になった一方で、ティームのような提言があることにもテニス界の知性を感じる。
ティームが主張する自由競争。
さすがは読書家のインテリ派、選手会長も務めるリーダーシップと説得力だが、そんな考えを真っ向から否定する選手が現れた。現在世界ランキング3位で、ポスト・ビッグ3の筆頭であるドミニク・ティームだ。
「生きるのにも困るようなテニスプレーヤーは、かなり下のほうの選手にもいないよ。しかも、テニスに心血を注いでいない選手、プロともいえないような選手は大勢いる。どうして僕たちがそういう選手たちにお金をあげなくちゃいけないのか、よくわからない。
それならむしろ別の、本当に困っている人や組織に寄付したい。僕たちトッププレーヤーは誰も何かを与えてもらってトップになったわけじゃない。みんな、自力で這い上がってきたんだ」
完全な自由競争、弱肉強食、実力主義に沿った意見に、密かな賛同者も少なくないのではないか。
物腰柔和な一方で芯のある一面も。
救いの手を差し延べようとするジョコビッチに比べれば、「なんと冷たい」「心の狭い」という印象を受けるかもしれないが、ティームという選手の経歴や性格をある程度知っていれば、見方も変わる。
全仏オープンで2度、そして今年の全豪オープンでも決勝に進んだが、全仏ではいずれもナダルに、全豪ではジョコビッチに敗れた。それでもビッグ3の存在を恨めしく思うどころか「彼らがトップにいる間に、僕は最初のグランドスラム・タイトルを獲りたい」と語ったピュアなチャレンジャーだ。
物腰柔和ではにかみ屋なイメージの一方で、批判すべきは批判するまっすぐな人でもある。昨年の全仏オープンでは、セリーナ・ウィリアムズのわがままでインタビュールームを変更させられる出来事があり、グランドスラム優勝23回の女帝を相手に「(セリーナは)性格の悪さが出た」とメディアに語って大きな騒ぎになった。