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プレミア史上最強チームはどこだ。
マンC、リバプール、それとも……。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2020/04/08 11:30
難攻不落の守備組織を構築した当時のチェルシー。ギラついたモウリーニョ監督も懐かしい。
1試合平均失点0.39の鉄壁ぶり。
総失点はわずかに15!
1試合平均0.39!
なんというデータだ。13試合連続も含め、クリーンシートは25回を数えた。まさしく“ディフェンスマスター”である。
1対1と空中戦に絶対の強さを誇ったジョン・テリー、中盤の底でピンチの芽を未然に摘み取ったクロード・マケレレ、卓越した状況判断で最終ラインを締めたリカルド・カルバーリョ、1025分という無失点記録(当時)を樹立したGKペトル・ツチェフなど、守備陣に超一流の手練れを揃えていたことは事実だが、やはりジョゼ・モウリーニョ監督のマネジメントも見逃せない。
「必要以上のリアクション・フットボール。観ていても楽しくない」
「クラウディオ・ラニエリ(前監督)はフレンドリーだったが、この監督はいつも仏頂面だ」
どれだけメディアの批判に晒されても、モウリーニョはゲームプランを変えなかった。対戦相手が優勝を争ったアーセナル、ユナイテッドであっても、プレミアリーグから降格したノリッジ、サウサンプトン、クリスタルパレスであっても、チェルシーは堅守速攻を貫いた。
ランパードやテリーが心酔した。
前述した総失点15は前年比マイナス15。総得点72はプラス5。このデータにも、モウリーニョのプライドがうかがい知れる。
また、当時の彼は身を挺して、あらゆる外敵からクラブを守っていた。だからこそテリーが、フランク・ランパードやディディエ・ドログバがいまでも「最高のボス」と尊敬し、ツェフとも良好な関係を維持しているのだろう。
1日も早く、あのころのモウリーニョに戻ってほしい。近ごろ彼は愚痴っぽい。
「ルート・ファンニステルローイの戦線離脱が痛かった。彼さえ元気であれば、われわれが勝っていた」
ユナイテッド・サポーターは、そう言い訳するに違いない。
「選手層が薄すぎた。オフの間に補強できてさえいれば……」
クラブ史上初の連覇を逸したアーセナル・サポーターは、いまだに地団太を踏んでいる。