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いまアスリートは身を切るべきか。
欧米で広がる給与削減問題、日本は?

posted2020/04/11 11:40

 
いまアスリートは身を切るべきか。欧米で広がる給与削減問題、日本は?<Number Web> photograph by AFLO

リオネル・メッシの7割返上表明で一気に火がついたアスリートの年俸カット問題。選手とクラブの哲学が問われている。

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井川洋一

井川洋一Yoichi Igawa

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 疫病で崩れそうな社会を支えるために、トップアスリートを含む高額所得者たちは身を切るべきだ――。現在、欧州のフットボール界では、選手の給与削減に端を発し、こうした議論がかわされている。

 古くからノブレス・オブリージュ(高貴な者の義務の意。貴族や富裕層は社会に貢献する義務があるという意味の言葉)が一般的な道徳観として浸透している欧米では、多くの資産を持つ者がそれ以外の人々に富を再分配するのは当然だと考えられてきた。著名なビリオネアやセレブリティがチャリティーの活動をしている話は、普段からよく報じられている。

 現在、新型コロナウイルスの影響により、欧州でもほぼすべてのフットボールの活動が止まっている。

 他の多くの業種と同じく、そこに携わる人々の全員が何らかの形で悩まされているはずだが、なかでも収入を得られなくなったクラブは大打撃を受けている。プレミアリーグによると、全体の損失は10億ポンドを超す可能性さえあるという。

裕福なリバプールの補填に税金?

 英国政府は3月20日、雇用を維持する企業に対して、従業員の月給の80%(月額上限2500ポンド≒34万円)を支給する政策を打ち出した(同26日には自営業者やフリーランスを対象にした同様の支援も発表)。

 これを受けて、トッテナム、ニューカッスル、ボーンマス、ノリッチといったプレミアリーグのクラブは、選手以外のスタッフに一時的に休暇を与え、その施策の支給要件を満たそうとした。さらに昨季のチャンピオンズリーグを制し、今季のプレミアリーグで首位を独走していたリバプールがそれに続いた。

 すると欧州王者のこの決断に対し、サポーターやクラブOBらが厳しく非難した。その政策は企業の規模や営利、非営利は問わないと謳っているものの、昨季の総収入が5億3300万ポンド(≒720億円、デロイト・フットボール・マネーリーグより)だったビッグクラブの補填を国民の税金で賄うのはいかがなものか。

 そうした行為は栄光の伝統を持つリバプールの評判を貶めるものではないか。またその陰で選手がこれまでどおり満額のサラリーを受け取るのは不公平ではないか。こうした批判により、リバプールは「過ちを認めて」(ピーター・ムーアCEO)決断を覆し、公に謝罪した。

【次ページ】 クロースやルーニーは一律の返納に反発。

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