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五輪延期で思い出した東大入試中止。
選手が感じるであろう「1年」の重み。

posted2020/04/02 11:30

 
五輪延期で思い出した東大入試中止。選手が感じるであろう「1年」の重み。<Number Web> photograph by Hiroyuki Nagaoka/AFLO

7人制ラグビー日本代表、副島亀里ララボウラティアナラ。6月で37歳を迎える(写真は2019年のもの)。

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藤島大

藤島大Dai Fujishima

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Hiroyuki Nagaoka/AFLO

 自分とはなんの関係もないのに妙に気になる出来事がある。これもそうだ。1969年の東京大学の入学試験は中止された。「安田講堂占拠」など激しい学生運動の影響だった。そのとき勉強のきわめてよくできる全国の受験生はどんな気持ちだったのか。

 東京五輪の延期のニュースにそんな歴史が頭に浮かんだ。1969年の受験生が2020年のアスリートにちょっと重なったのである。入試を五輪にたとえるのは間違いか。力をたくわえて合格(代表入り)を果たしたのに授業や研究の機会がなくなる。こちらに近いのかもしれない。いずれにせよ満を持したステージをひとまず失った。

 東京大学をめざす現役受験生には浪人という手があった。事実、少なくない者がその道を選んだらしい。

 しかし、すでに浪人の1年、もしくは数年を過ごした身には、実力醸成の毎日を経て、いざ勝負の場が消えたのは衝撃だっただろう。やむなく異なる大学に散って、こんどはそちらを第一志望としていた高校生や浪人生が「合格圏にいたはずなのに1点差で落ちた」なんて事態も生じたはずだ。

フィジー生まれの「長老格」。

 ラグビーの男子7人制のジャパンに異色のランナーがいる。副島亀里ララボウラティアナラ。コカ・コーラレッドスパークス所属。15人制ではウイングの走り屋である。この6月に37歳。若くはない。セブンズではスピード、短い時間での回復力がいっそう求められる。だから「長老格」だ。

 順当なら東京五輪の代表に選ばれて、あるいはキャリアの頂点としたかもしれない。「そこ(来年)に照準を合わせられるよう努力します」(西日本新聞)。実力者なのでおそらくうまく運ぶ。ただ「1年」が重い年齢であるのも事実だ。

 副島亀里ララボウラティアナラ、以下、副島はフィジーの生まれである。7人制ラグビーの王国だ。ただし本人は競技のエリートではなかった。バヌアレブ島の故郷の村は「ジャングルのような場所で、映画に出てきそうなところ。まともな道もない」(ラグビーマガジン)。実質の競技歴は17歳から。それまでボールはもっぱらヤシの実だった。島の地域選抜に呼ばれた。首都スバのクラブでほんの一時期プレーした。経歴はそのくらい。日本の大学やトップリーグ級のチームから声のかかる存在ではなかった。

【次ページ】 来日で開けた予期せぬラグビーの道。

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