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19歳ハーランドに今、世界が時めく。
ザルツブルクで磨いた決定力の秘密。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2020/02/27 11:50
ドルトムント移籍後、これほどまでの大活躍を想像した人は多くないだろう。アーリング・ハーランド。2020年代のフットボールシーンの主役となれる男だ。
レバークーゼン戦では封じられた。
世界中から絶賛されているハーランドは、このまま無条件でトッププレーヤーへと上り詰めるのか――。
しかし、関係者はみんなブレーキをかけている。焦ってはいけないと。公式戦デビューからゴールを量産したことで、メディアは騒ぎ立てた。それでも首脳陣は冷静に現状を分析している。確かにゴールを決めてはいるが、まだまだ時間が必要なのだ、と。
実際、ヴァツケも「うちでのスタートは確かに素晴らしかった。しかし、本当の意味でのサクセスストーリーが始まるのは、まだ先のことだ」と冷静に捉えている。
すべてがすべて、うまくいっているわけではない。具体例を挙げると、レバークーゼン戦がある。
この試合、相手のペテル・ボシュ監督は5バックを起用し、ペナルティーエリア内でスペースがなくなるように守らせた。いい形でボールがまったくもらえないハーランドはシュートらしいシュートは1本だけ。連続得点記録も途絶えた。
瞑想やヨガをして集中力アップ。
今後はますます警戒されて、そうした試合も増えてくるだろう。徹底的に守られる。コンディションを崩すときもあるだろう。そんなときに、どうすればいいのか。
ファブレ、そしてマーシュは、くしくも同じようなアドバイスを送っている。
今後、成長を続けていくために何が必要かと問われたとき、ファブレは「冷静さを保ち、サッカーに集中することが大切だ。若い選手は車や家といったぜいたくを覚えてしまうと道を踏み外してしまう」と忠告した。
そしてマーシュも「もっとよくなっていくポテンシャルを持っている。だが、そのためには今後も現在と同じく努力を続けないと。理想は何にも気をそらさずに、サッカーをしていくことだ」と強調していた。
これまでも、一瞬の輝きだけで消えていった「○○2世」「10年に1人の天才」という選手は無数にいる。
ただし、ハーランド自身はそのことをよく理解しているようだ。自己鍛錬に余念がない。ピッチ上だけではなく、生活スタイルも大切にしている。
瞑想やヨガを日常的に行い、集中力の向上に取り組んでいるという。ヨガの先生を務めるサラー・シュタルクさんは「ハーランドは、日常からすごいプレッシャーの中にいます。メディアに報じられて、ちょっとしたことが話題になったりする。ヨガを通してそうした中でも自分を見失わず、自分を保っていく道を探っているのです」とのコメントを地元紙に寄せているほどだ。