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J1高卒ルーキー診断と戦略・前編。
鹿島は「新黄金世代」の予感が?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byGetty Images
posted2020/02/15 11:40
大きな期待を背負って鹿島に入団した松村。選手権を沸かせたドリブルをJの舞台でも発揮できるか。
新黄金世代と期待される鹿島の4人。
<鹿島アントラーズ>
GK山田大樹(鹿島ユース)、MF荒木遼太郎(東福岡)、MF松村優太(静岡学園)、FW染野唯月(尚志)
鹿島アントラーズは「世代交代」を念頭に置いて積極的な動きを見せた。高体連3人とユース1人の大型補強は柴崎岳、昌子源、梅鉢貴秀、土居聖真の2011年以来。1998年組(小笠原満男、中田浩二ら)が加わった当時と状況が似ていることもあり、その期待感は大きくなる一方だ。
補強ポイントの1つだったGKに世代トップレベルである山田の昇格は当然。フィジカルが強く、空中戦とシュートストップに抜群の安定感を誇る。ライバルはクォン・スンテ、曽ヶ端準、台頭著しいユース出身の20歳・沖悠哉と層が厚いが、特に沖との競争で相乗効果が期待される。
FWを見ると、高卒、大卒の若いストライカーの補強はマスト。その中で上田綺世(昨年、法政大から加入)を早々に獲得できたことで、高卒FW獲得が最重要マターとなっていた。そこで白羽の矢が立ったのが染野だ。ポストプレーができて、ゴールアプローチも多彩。フィニッシャーとしてもラストパサーとしても機能する万能型は喉から手が出るほどほしかった存在だっただろう。選手権前に発覚した負傷により出遅れているが、大迫勇也のような存在になるだけのポテンシャルはある。
荒木は中盤ならどこでもこなせる多彩さが評価につながった。タイプ的には土居聖真の後継者と言うべきか。かつて小笠原の横で柴崎が成長したように、27歳となった土居の近くでプレーできるメリットは大きい。
選手権を沸かせたドリブラー松村は中盤のみならず、SBでの起用も加味して獲得に至ったと考える。最大の補強ポイントだった左SBには杉岡大暉、永戸勝也という2人の実力者が加入。一方、右SBは内田篤人の後釜である伊東幸敏に加え、広瀬陸斗を獲得したが、いずれも絶対的な存在になるかは未知数。そこに松村も入れることで、競争力を上げる狙いもあるだろう。
川崎ユース10番の宮城は武者修行。
<川崎フロンターレ>
FW宮城天(川崎ユース)
一昨年の段階で大学サッカー界の目玉だったMF三笘薫(筑波大)と旗手怜央(順天堂大)の即戦力獲得が決まっていた川崎フロンターレ。さらに今季はサイドアタッカーのイサカ・ゼイン(桐蔭横浜大)とボランチまでこなせるDF神谷凱士(東海学園大)を獲得したことで新卒選手はいち段落した形だ。
それゆえに高体連からの選手獲得はなく、高卒選手はユースで10番を背負った宮城のみとなった。宮代大聖が復帰したこともあってか、宮城はJ3・カターレ富山に期限付き移籍をする。テクニックに秀でたタレントだけに、首脳陣も富山で力をつけて帰還することを願っているだろう。