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久々に素敵で完璧なミラノダービー。
インテルとミラン復権の第一歩に。 

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神尾光臣

神尾光臣Mitsuomi Kamio

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photograph byGetty Images

posted2020/02/14 18:00

久々に素敵で完璧なミラノダービー。インテルとミラン復権の第一歩に。<Number Web> photograph by Getty Images

イブラヒモビッチの個の力を封じ、勝ち切る。コンテ率いるインテルに、チームとしてのたくましさを感じる。

美しくも行儀の悪いコレオグラフィー。

 試合前のコレオグラフィー合戦は、相変わらず壮観だった。

 先手を打ったのは、ミランサポーターが巣食うクルバ・スッド(南ゴール裏)。照明のLED化に伴い試合開始前にはコンサート会場ばりの演出照明がされるようになったサン・シーロだが、スタジアムが暗くなった瞬間にスマホのライト機能を使ってスタンド一杯に光文字を映し出す演出――「インテルのクソ野郎」。

 美しくも行儀の悪い、とにかく実に“らしい”メッセージだった。

 一方、インテル側のクルバ・ノルド(北ゴール裏)には、3階席から1階席までフルに使った巨大なフラッグが登場した。

 守護聖人アンブロジウスが、聖人へ転身しようと口八丁で自己弁護する悪魔(ミランの愛称でもある)を円柱に蹴り飛ばして退治した伝説をモチーフにしたもの。その見事さに目を奪われる一方、反対側にはインテリスタの女性4人が噂話を立てるというフラッグが。

「ウルトラスの不文律に反し、警察に噂話を立てるのがインテリスタのおしゃべりども」という暗喩らしい。

 ミラノの伝統とサポーターの流儀。

 どちらもコレオグラフィーのテーマによく扱われるもので、特に両クラブが海外資本に買われた近年は、このテーマで押すことが多くなっている。培われた文化を大事にせよ、というメッセージを投げかけているようでもあった。

序盤からペースを握ったのはミラン。

 さて試合。

 インテルはGKサミール・ハンダノビッチが故障欠場、ラウタロ・マルティネスも出場停止という状況だった。エリクセンも戦術理解が進んでおらず、アントニオ・コンテ監督はベンチスタートの判断を下した。そんな彼らに対して、序盤から攻め立ててペースを握ったのはミランだった。

 中位以下まで順位を落としていたミランだが、イブラヒモビッチ加入後はチームの作り直しに成功し、一定の成果を上げていた。1月からのカップ戦を含めた7試合は5勝2分。戦術家で知られるステファノ・ピオリ監督は的確に人員を配置してチームを機能させ、かつインテルのサッカーを攻略する手段として活用した。

【次ページ】 エリア内に入るとイブラの独壇場。

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