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鹿島が失ったACLのタイトル。
「決勝戦に負けたのと等しい」 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byGetty Images

posted2020/01/29 11:55

鹿島が失ったACLのタイトル。「決勝戦に負けたのと等しい」<Number Web> photograph by Getty Images

こののスタメンで生え抜き選手は土居聖真ただ1人だった。鹿島は変わっていく、しかし変わってはいけないものもあるはずだ。

終わってみれば勝っている、という美学。

 鹿島の強さの根底には、「リアリスト」という姿がある。勝つためにどうすべきかを逆算し、方法を模索し続ける。試合の流れが悪ければ、ファールでそれを止めることも厭わない。また相手の出方に応じてプランを修正する力も選手たちは備えていた。内容は最悪でもポゼッション率が低くても、被シュート数が多かろうと関係ない。

「終わってみれば勝っている」

 それが美学だと話す選手も少なくなかった。そのふてぶてしさが鹿島アントラーズでもあった。

 しかし、海外へ移籍する選手が増加し、育成の時間が確保できない。補強選手が増えれば、選手任せでは立ち行かない。組織としての戦略、チームモデルが必要だ。そういう意識のもとで、「変わらなければならない」と2020年シーズンは舵を切った。

 そうなれば、チーム作りにも時間が必要だろう。リフォームではなく新築なのであれば、当然のことだ。それをサポーターも理解しているからこその、激励の拍手だったのだろう。スタメンに生え抜きの選手は土居だけだった。チームは確実に変動している。

監督の評価はまだできないが……。

 始動から3週間ほどで、監督の評価はできない。それでも、プレーオフに敗れるという痛手は小さくはない。

「監督が求めるサッカー」より、「勝利」を手繰り寄せるエゴが足りなかったのだろうか?

 勝利に対する気迫がシュートの精度にどう影響するのかはわからない。ただひとつ思うのは、「鹿島らしい」試合ではなかったということだ。

 しかし同時にこうも思う。“決勝戦”に2連敗している姿は、もう鹿島らしさを求める段階ではないのかもしれないと。

【次ページ】 鹿島の栄養はタイトルそのものである。

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