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鹿島が失ったACLのタイトル。
「決勝戦に負けたのと等しい」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2020/01/29 11:55
こののスタメンで生え抜き選手は土居聖真ただ1人だった。鹿島は変わっていく、しかし変わってはいけないものもあるはずだ。
合流から10日しか時間がなかった。
天皇杯で優勝していれば、ACLは2月10日のグループリーグからの参加だった。シーズンは2月8日のゼロックス杯でスタートするため、1月中旬を目途に新監督での始動を予定していた。しかし元日の天皇杯決勝に敗れた鹿島は、リーグ3位でACLプレーオフ出場権を得たため、1月28日に初戦を迎えることになった。始動は1月8日に前倒しを余儀なくされた。
とはいえ、選手たちには最低でも2週間程度のシーズンオフを得る権利があるし、なにより休暇とリフレッシュがなければ、ケガのリスクだけではなく、メンタル面での問題が生じる可能性も高まる。
毎年1月下旬にACLのプレーオフが実施されるようになり、しかも4枠のうち2枠がプレーオフに参加(以前は1枠だったが、アジア内での国別ランキングによってストレートイン枠が減った)するようになって以来J上位チームの始動は早まり、シーズンオフが短くなる傾向は続いている。
2019年も、前年CWCに出場した後にACLプレーオフに参戦した鹿島のシーズンオフは短いものだった。
「シーズン前のキャンプで身体づくりをする時間が限られて、その結果、けが人が増えたとも考えられる」と鈴木は語っていた。
しかし結果的には2020年シーズンのオフはさらに短くなってしまったため、昨年主力として戦った選手は始動時期をずらし、1月16日にチームへ合流した。つまりACLの準備はわずか10日間しか時間がなかったことになる。
監督は鹿島の理想に一致する人選。
「ボールを握り、ゲームを主導する、主導権を持って戦いたい。ボールのないときはアグレッシブな守備でボールを奪いにいく」
新監督となったアントニオ・カルロス・ザーゴは、自身の理想のサッカーについてそう語っている。1996~97年には柏レイソルでのプレー経験を持ち、ASローマ時代にはセリエA優勝経験を持つ元ブラジル代表CB。
2009年よりブラジルで監督のキャリアをスタートさせ、ローマやシャフタールドネツクでアシスタントコーチを務め、2015年からはブラジル全国選手権セリエBやセリエCのチームで監督を務めてきた。ヨーロッパでの指導経験を持つブラジル人という、鹿島の理想に合致する人選だ。
「理想のチームを作るには準備期間は短いけれど、要求に対する選手たちの意欲がとても素晴らしい。100パーセントではないが、できることはやった。アントラーズにはタイトルが必要だというのはみんながわかっている。プレーオフはタイトルへ向かう道。まずはそこを突破することがもっとも重要だ」
新体制発表会見でそう語った新監督にACLの前日会見でチームのポイントを聞くと、「ボールを持つことでゲームコントロールすること。ボールを失っても素早くプレスをかけること。ホームというアドバンテージを生かし、主導権を持って戦いたい。できないこともあるかもしれないが、時折はやってきたことが表現できると思う」と話してくれた。
緊張からなのか性格なのかわからないが、会見で笑顔を見せることはなかった。