マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「大学注目」という新カテゴリー。
センバツで気になる6人の野手たち。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2020/01/24 16:00
明徳義塾の新沢颯真から漂う大物感。際立つバッティングセンスと抜けた部分の共存がチャーミングだ。
明徳・奥野の一振りでわかるセンス。
その明徳義塾・奥野翔琉選手のチームメイトには、新沢颯真(3年・177cm75kg・右投左打)という左打者がいる。
明治神宮大会の神宮球場で、そのバッティングを見て驚いた。
優勝した中京大中京との試合だ。最初の打席の初球、137キロの私にはカットボールに見えたきびしい内角球を、みごとに振り抜いてライトポール上空へ、あわや……という推定130m大ファウル。
苦しそうにタテに振り抜いたスイングじゃなかった。厳しくふところを突かれた137キロなのに、投球を“線”で捉えてしっかり運んでいった「本物」の打球だった。
このひと振りで、もう結構。ほかは見なくてもよい、クリーンアップの一角を託したい。バッティングに関しては、間違いなく「逸材」だ。
神宮に来る前の「四国大会」は4試合で5割、13打点だったという。なのに、さらにその前の県大会では、ベンチ外だったそうだ。
脅威の大ファウルの次の打席、1死一塁から送りバントにいって、ダグアウトの馬淵史郎監督を大いに腐らせていた。そんな「とぼけたところ」も、私には逆に大物感に映ってしまった。
明徳義塾・新沢颯真、今はこの無名のとぼけたバットマンが、3年後、4年後、立派な4番バッターに成長した姿が目に浮かぶようだ。