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トルシエが一刀両断したサウジ戦。
「攻撃面は何もなかった。ゼロだ」
posted2020/01/10 20:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
JFA/AFLO
――U-23日本代表の初戦、サウジ戦はいかがでしたか?
「ああ……日本は試合の入りに完全に失敗した。とてもゆっくりとしたテンポで、スピードを欠き、プレーのイマジネーションもまったく感じられなかった。パスは回していたがインテンシティも足りずスピードアップする場面も見られなかった。ただ回しているだけで満足しているように見えた。
私には驚きだった。こんな日本を見るとは思っていなかったからだ。以前とはまるで別のチームだった。この試合に望む覚悟も、サウジアラビアのようなチームと対戦するレベルではなかった。
まるで弱小チームがパスを回しているだけで満足しているようだった。パスを回して攻撃を組織しようと試みていたし、相手の守備を崩そうともしてはいた。だが、残念なことにそのプレーは正確性を欠き、インテンシティもプロフォンダー(縦への攻撃の速さと深さ)も十分ではなかった。
しかも、積極的な突破の試みもなく、ゴールへの意志も感じられなかった。
今日の日本の攻撃はとても酷かったと言わざるを得ない。10番(食野亮太郎)はしばしば突破を試みていて、たしかに興味深かった。しかし他の選手たちは……彼らも優れた選手であるはずなのだが、いずれも個の才能を欠いていた。ボールを保持はできるが、個の能力が足りないからそれ以上のことはできない、という感じだった。このレベルの試合では、それだけではうまくはいかないのは当然だ」
「どうプレーしていいのかわからなかった」のでは?
――それがサウジの攻撃陣との差でもありました。彼らはとてもアグレッシブで、個の能力でも優れていました。
「つまり日本は『ボールを保持したが、どうプレーしていいのかわからなかった』、ということなのだろう。
リアクションはできるチームのはずだ。カウンターアタックも仕掛けられる。しかし……ボールを保持したときにプレーが弱体化しているように見えた。
相手を危険に陥れることがまったくできず、運動量もスピードも不十分。ボールを回すだけのプレーに終始し、攻撃にバリエーションが見られなかった。
なので、この初戦に関しては日本に批判的にならざるを得ない。
日本は試合に勝つことができなかった。勝てる手段と力を持っているにもかかわらず、その力を発揮しなかったことは……率直に『罰を受けた』と言うことができる。これは『罰』だ。そしてこの『罰』は、日本のこれから先の試合に有効に働くだろう。
最後の何分間かを除きシステムも変えなかった。この試合では日本本来の力に相応しい良いイメージを残すことができなかった。
私の日本に対するイメージは、今でもとてもポジティブだ。日本の力はこんなものではないと思っているが、今日はそのポテンシャルを発揮できなかった、ということなのだろう」