ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
トルシエが一刀両断したサウジ戦。
「攻撃面は何もなかった。ゼロだ」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byJFA/AFLO
posted2020/01/10 20:00
マンチェスター・シティへの完全移籍後、スコットランドのハーツへレンタル移籍されている食野亮太郎。この試合で、トルシエが唯一評価した選手である。
「才能のきらめきが何も感じられなかった」
――いえ、違います。(食野以外の)ヨーロッパ組を欠いていますし、ベストではありませんが、スタメンになるであろう選手は多いでしょうし、このグループがベースになるのは間違いないです。
「では誰が欠けているのか。久保(建英)はそうだろうが……」
――久保や堂安(律)、冨安(健洋)……、オーバーエイジもそうです。
「ベストに比べて50%が足りないということだね」
――そうなります。
「そういうことならば、もっといいものを今後に期待できるわけだ。今日は酷かったが、攻撃に関しては今後に期待ができる、ということだ。
今日の日本には、才能のきらめきが何も感じられなかった。個の力は何もなかった。その結果、チームは一本調子のプレーに終始した。スピーディかつアグレッシブに前にボールを運ぶプレーが一度としてなかった。
しばしば日本はこういう状態に陥る。これが初めてではないが、とりわけ後半は悲惨だった。前に進む意志が感じられなかった」
「闘争心に火をつけねばならない」
――それでは次のシリア戦に向けて、何をどう改善していけばいいでしょうか。メンタル面でしょうか?
「そうだが心配はしていない。今日はうまくいかなかっただけだ。日本が第2戦もこんな風にプレーするとは誰も思ってはいない。そんなことはあり得ない。
だから何も心配はしていない。もちろん部分的な修正は必要だ。警鐘を鳴らす必要もあるだろう。選手には鷹揚に構えるのではなく、もっとアグレッシブにと尻を叩くべきだ。サウジ戦の選手たちは、芝生に寝そべって寛いでいるようにしか見えなかったからだ。
日本の選手達の闘争心に火をつけねばならないのは間違いない。強いインテンシティと決意、運動量がなければ試合に勝てないことを、彼らにいま一度想起させるべきだ。それができさえすれば、次の試合は何の問題もない。私は何も心配していない。日本の方が(相手よりも)優れているのは明らかだからだ。
しかし日本はプレーで異なるバラエティーを示す必要があるし、パスをベースにするのはもちろんだが、もっと深みを交え突破も頻繁に試みる。3-4-3のシステムに問題はないが、プレーにスピードを欠いたのは致命的だった。パスのスピードも足りなかった」