プレミアリーグの時間BACK NUMBER
誰からも好かれるアンチェロッティ。
中位で喘ぐエバートンの再建なるか。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2020/01/10 11:40
エバートンのテクニカルエリアに立つアンチェロッティ。世界的指導者がまた1人、プレミアの舞台に帰ってきた。
U-23主体の相手に支配を許す。
ナポリを率いていたアンチェロッティは今季CLグループステージでリバプールと1勝1分けだった。そんな名将を迎えても、アンフィールドでの21年ぶりの白星を上げることはできず、クロップ率いるリバプールにダービー連続無敗を10試合に伸ばされた。
それもこの日、リバプールは3日前のリーグ戦から先発9名を入れ替えてきた。決勝ミドルを蹴り込んだカーティス・ジョーンズをはじめ、最終的にティーンエイジャーが5名プレーしたのだ。
メディアが「U-23チーム」と呼んだリバプールに対して、エバートンはベストメンバーで臨んだが、勝利を収められなかった。そう考えると、敵地での5失点で前体制の終焉を見た12月のリーグ対決に勝るとも劣らぬ“屈辱の敗戦”だったと言えるかもしれない。
前半には3度の先制機があった。リバプールの守護神アドリアンの好守もあったが、チャンスを得たCBメイソン・ホルゲートのヘディングも、ドミニク・キャルバート・ルーウィンとリシャルリソンのシュートも、相手GKの正面にしか飛ばせなかった。
後半はカウンターも発動できなくなった。危険度の高いクロスを放り込んでいたセオ・ウォルコットの足も止まり、貴重なマイボールを前線に蹴り出すようになった中盤では、ともに30歳のギルフィ・シグルズソンとモルガン・シュネイデルランが、攻守に果敢で自信みなぎるリバプールの若者たちに支配を許した。
チェルシー時代の怒りを思い出す。
「望みの選手そのもの」とは試合後のクロップによる南野評だが、アンチェロッティは正反対の評価を自分の選手たちに与えたかったのではないか。
新監督は、不機嫌な表情でテレビカメラの前に立つと、「不十分の一言だ」と後半のチームパフォーマンスを振り返り、「すぐに選手たちにも伝える」と語っている。普段は感情も昂ぶっている選手を叱咤するようなことはせず、翌日のミーティングで反省と改善を要求するアンチェロッティにすれば、異例の事態だ。
アンチェロッティの怒りというと、筆者は10年前のチェルシー時代の会見を思い出す。
相手は偶然にもエバートンだった。調子を落としていたチームがホームで前半のリードを追いつかれた試合後のこと。後半の戦いぶりについて「怖気づいている」「ロングボールに逃げた」「あんなサッカーはすべきではない」とした発言は、今回のエバートン評と同様だ。
エバートン戦後のCLではスタメン4名を変更。続くプレミア翌節には先発イレブン中9名がエバートン戦と同じ顔ぶれに戻っている。ただ今回は、問題のダービーを境に監督の構想から外れる選手が出てくるかもしれない。