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誰からも好かれるアンチェロッティ。
中位で喘ぐエバートンの再建なるか。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/01/10 11:40

誰からも好かれるアンチェロッティ。中位で喘ぐエバートンの再建なるか。<Number Web> photograph by Getty Images

エバートンのテクニカルエリアに立つアンチェロッティ。世界的指導者がまた1人、プレミアの舞台に帰ってきた。

エバートンはかつて強豪だったが。

 当人が就任要請に応じた理由のひとつとして挙げているように、エバートンにも強豪としての歴史はある。だが、それは1980年代までの話。最後のリーグ優勝からは33年、FAカップ優勝によるラストタイトルからは25年、プレミアでの前回トップ4入りからも15年が過ぎている。

 今世紀に入りアンチェロッティがミラン、チェルシー、パリSG、レアル・マドリー、バイエルン、ナポリを渡り歩く間、エバートンはプレストン(モイーズ)、ウィガン(マルティネス)、サウサンプトン(クーマン)、クリスタルパレス(アラーダイス)、ワトフォード(シウバ)から監督を招いてきた。

 そんな中、いきなりアンチェロッティほどの経歴の持ち主が指揮を執ることになれば、エバートンが「金で釣った」と世間で見られるのもムリはない。実際、推定1150万ポンド(約16億円)とされる年俸は、前任地の2倍増以上。高給で知られるプレミア監督陣のなかでもペップ・グアルディオラ、ジョゼ・モウリーニョ、クロップに続いて、トップ4入りを果たせる規模にある。

 その反面、引き継いだチームの戦力がトップ6争いさえ難しいレベルである事実は、新監督も認識しているに違いない。

 ただしこの就任に際してはヨーロッパカップ戦への復帰も「ミッション・インポッシブルではない」とし、これまでの四半世紀近い監督キャリアでは、「19年ぶりのリーグ優勝」や「リーグ6位からCL王者への進化」を実現した実績もあると述べている。

 だが、それはパリSGとミランでの話。アンチェロッティは、攻撃志向ではあっても理想に固執するタイプではなく、現実的な感覚を持ち合わせた指揮官でもある。

ダービー敗戦で現実が浮き彫りに。

 エバートンの厳しい現実が浮き彫りになったゲームが、采配4試合目に訪れたマージーサイド・ダービーでの敗戦だ。

 バーンリー戦(1−0)とニューカッスル戦(2−1)と連勝し、マンチェスター・シティ戦も惜敗(1−2)だったことで気を良くしていたファンとしても、名将登場に浮かれている場合ではないと痛感しただろう。

 カップ戦の早期ラウンドで、スコアは僅差の0−1。しかし、地元の宿敵との一騎打ちであることに変わりはない。観客動員数が減る傾向にあるカップ戦ながら、会場が今季の平均動員数を上回る観衆で埋まった立派な大一番だった。そんなダービーで、あえなく完封負けを喫したのだ。

【次ページ】 U-23主体の相手に支配を許す。

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