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誰からも好かれるアンチェロッティ。
中位で喘ぐエバートンの再建なるか。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/01/10 11:40

誰からも好かれるアンチェロッティ。中位で喘ぐエバートンの再建なるか。<Number Web> photograph by Getty Images

エバートンのテクニカルエリアに立つアンチェロッティ。世界的指導者がまた1人、プレミアの舞台に帰ってきた。

及第点を与えられるのは2人くらい。

 アンチェロッティは新任地での初陣、前節から先発メンバー2名を入れ替え、2戦目では5名、3戦目では再び5名とチームをいじってきた。システムもオーソドックスな4-4-2と3バックを併用。このような動きが「大物監督らしい大胆な変更」と報じられたが、個人的には「アンチェロッティらしい良識ある試行」と理解していた。

 就任タイミングが過密日程と重なり、試合の合間は選手のリカバリーを優先せざるを得ない。そんな新監督にとって、既存戦力にチャンスを与えて実力を確認するには、実戦での試行錯誤が最も平等で効果的な方法だ。

 そして迎えたFAカップでのダービー、年末年始の連戦に終止符を打つ一戦で、スタメン据え置きで臨んだ結果は「不十分」だった。リバプール戦で及第点以上を与えられる選手は、失点を最小限に食い止めたGKジョーダン・ピックフォードと、前半に最も相手ゴールを脅かしたユース出身のキャルバート・ルーウィンぐらいだ。

フロント陣は名将を支えられるか。

 今後はフロント陣の出方も注目される。

 アンチェロッティとの交渉段階では、オーナーのファルハド・モシリが欧州返り咲きに意欲的と伝えられており、収容人数が4万人を下回るグディソン・パークからの移転も検討されている。

 すでに5万2000人収容の新スタジアムのデザインも発表されており、リバプール戦で屈辱を味わう頃には、昨季の会計でクラブ史上最大の損失が計上されたとの情報も出回るという具合……。

 となれば、財布の紐が固くなる今冬の移籍市場では予算を賢明に使わなければならない。ところが最近のエバートンは、その補強が「無駄使い」と言われても仕方がない。

 シウバ体制下では2億ポンド(約280億円)近い予算が投じられたが、結果は前シーズンと同じリーグ8位の1年目、途中解雇の2年目だった。モシリ政権下での補強はオーナー自身、ビル・ケンライト会長、フットボール・ディレクターのマルセル・ブランズ、さらには監督のうち誰の意思が最も強く反映されているのか不透明な部分がある。

 ちなみにチェルシー時代の会見で自軍を酷評したアンチェロッティは、翌月に開いた冬の移籍市場で、フェルナンド・トーレスとダビド・ルイスを計7100万ポンド(100億円弱)で獲得している。その結果は無冠に終わったシーズンの最終節、これまた奇しくもエバートン戦で敗れた直後の解任だった。

【次ページ】 「完璧な監督人事」であるからこそ。

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