猛牛のささやきBACK NUMBER
若手投手が優秀すぎるオリックス。
2020年は野手育成で上位を狙う。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2019/12/30 11:40
2019年シーズンにリーグ2位の打率3割2分2厘、キャリアハイの29本塁打を記録した吉田(右)を中心に、2020年は打線の奮起が期待される。
スタンスはあくまでも「提案」。
中垣コーチは、選手の動きをじっと観察し、それぞれに足りない部分や噛み合っていない原因を見極めて、一人ひとりに合ったアドバイスをする。
かつて北海道日本ハムでチーフトレーナーを務め、その後、メジャーリーグのサンディエゴ・パドレスの応用スポーツ科学部長を務めた。それほどの実績のある人物だが、選手に対してやらせたり、押し付けるような指導はしない。「こうしてみたら?」「聞くんなら聞いて」というスタンスなのだという。
「自分でやらなきゃうまくも、強くもならないですし、僕はやらせる立場では全然ないと思っているので」と中垣コーチは言う。
「僕は運動の構造や、どうしたら運動技術が上手に発揮しやすいかということを学んだり経験したり、仕事にしてきているので、その材料を、僕のわかる範囲で、出せる時に出すだけです。
例えばピッチャーの場合は、ホームベース方向に向かっていくという動作をコントロールすることに、実は気づかないうちに苦労している場合が多い。ピッチングもバッティングもそうですが、横に進んで最後に回転しながら力を発揮するというのは、前に進むのとはまったく違う難しさがある。1歩で加速して、バチーンと力を発揮する、特殊な運動技術だと思います。
それをうまくやるための体力トレーニングのあり方や、技術への落とし込み方といったものを、ずっと考えてきているつもりなので、その材料を、選手の邪魔にならないように散らばしておく、というような意識です」
小谷野「あの人との出会いは大きかった」
日本ハムからオリックスに移籍した小谷野栄一が、現役時代、よく中垣コーチの話をしていた。
「あの人との出会いは本当に大きかった。中垣さんと一緒に取り組むようになってから、一軍で試合に出られるようになった。足が速いわけでも、肩が強いわけでもなく、特別な身体能力がなくても、こういうことを突き詰めれば長くやれるんだな、という動作を身につけさせてくれた」
その小谷野は現役引退後、2019年は東北楽天でコーチを務めたが、このオフ、オリックスに二軍打撃コーチとして戻ってきた。
中垣パフォーマンスコーチとのタッグで、現役時代の小谷野のように、息長く活躍できる選手が育つことを期待したい。