猛牛のささやきBACK NUMBER
若手投手が優秀すぎるオリックス。
2020年は野手育成で上位を狙う。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2019/12/30 11:40
2019年シーズンにリーグ2位の打率3割2分2厘、キャリアハイの29本塁打を記録した吉田(右)を中心に、2020年は打線の奮起が期待される。
パ最下位に終わった原因は……。
今年の最下位は、打線の得点力不足が大きな要因である。チーム打率、得点ともにリーグ最下位。特にシーズン序盤の得点力不足は深刻で、先発投手がゲームを作っても勝てない試合が続き、4、5月の出遅れが大きく響いた。
開幕当初は、1、2番に入った福田周平や西浦颯大、佐野皓大が持ち前の足を活かしてアグレッシブな走塁でチャンスを生み、攻撃スタイルの変化を感じさせたが、そうして作ったチャンスをなかなか得点につなげられなかった。
そんな打線の中でも収穫は、ドラフト7位ルーキーの中川圭太だ。4月末に一軍に昇格すると、新人とは思えない対応力と勝負強さを発揮。交流戦では3割8分6厘という高打率を残し、新人としては史上初の首位打者に輝いた。夏場に疲労がたまり7月は打率が落ちたが、それでも一軍に帯同しながら復調させたのは、野手の柱の1人になってほしいという首脳陣の期待の表れだろう。
だが、2019年シーズン、規定打席に達したのが吉田正尚と福田の2人だけというのはあまりに寂しい。
2020年に向けては、得点力不足解消のため、メジャーリーグで通算282本塁打の実績のあるアダム・ジョーンズと、マイナーリーグで174本塁打のアデルリン・ロドリゲスを獲得した。
育成路線のカギを握る中垣コーチ。
その一方で、FA戦線での日本人選手獲得には動かず、育成路線に舵を切った。
2019年のルーキーを見ても、中川以外にも、パンチ力のある頓宮裕真や、終盤戦で一軍を経験した高卒新人の太田椋や宜保翔など、楽しみな選手はいる。
シーズン後半にパワーアップした打撃を見せつけた5年目の宗佑磨は、来年、内野手として定位置確保を狙う。プロでの13安打のうち半分以上が本塁打という杉本裕太郎や、俊足の佐野、西浦も、打撃の確率を上げれば大きな戦力になる。
現有戦力に今年のドラフトで獲得した支配下選手5名、育成選手8名を加えて育成路線を行く上で、鍵を握る存在となりそうなのが、中垣征一郎パフォーマンスコーチ兼コーチングディレクターだ。
中垣コーチは今年、主にファームを担当。2年目で初勝利を挙げたK-鈴木や、昨オフに阪神から移籍し、今年プロ初完封を果たした竹安大知、支配下登録を勝ち取りシーズン終盤に一軍で活躍した神戸など、今年ファームを経て一軍で結果を出した投手に話を聞くと、必ずと言っていいほど中垣コーチの名前が出た。
K-鈴木は、中垣コーチとともに取り組んだトレーニングで体重移動がスムーズになり、コントロールが改善された。竹安は、マウンドで陥りやすいズレに対処する術を学んだ。神戸は中垣コーチに勧められてウエイトトレーニングを増やしたことで、一軍で通用する球の強さを身につけられた。