酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
イチローの「惜しい記録」って何だ。
データで総ざらい、2019年の野球。
posted2019/12/31 11:30
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Naoya Sanuki
野球記録ファンからすれば、令和元年も「お酒が進む年」だった。今年も様々な記録が達成されたが、個人的にピピッときた記録を紹介したい。
【安打に徹底的にこだわったイチロー】
何といっても最大の話題は「イチローの引退」だろう。この偉大なアスリートの伝説の最終章が書き終えられたことは、感慨深い。
イチローがNPBデビューした1992年は、平成4年。まだ昭和のスラッガー門田博光が44歳で現役だった。ここから営々と試合に出続けて28年である。
イチローが樹立した記録は数多いが、エポックは「MLB通算3000安打」だろう。達成したのは2016年8月7日。私は前日、取材で川淵三郎さんにお目にかかったが、川淵さんは開口一番「今日はイチロー、打った?」と言ったほどだった。
イチローは21世紀で最も安打を狙った。
そんなイチローの「らしさ」を象徴するのが2004年「シーズン最多安打」だ。
<MLBのシーズン最多安打5傑(MLB公式サイトから)>
1 イチロー262安打/2004年
2 G.シスラー257安打/1920年
3 L.オドゥール254安打/1929年
3 B.テリー254安打/1930年
5 A.シモンズ253安打/1925年
すごいのは2位以下の記録がすべて1930年以前、ベーブ・ルースが活躍していた時代だということだ。この記録を21世紀以降に限定するとこうなる。
1 イチロー262安打/2004年
2 イチロー242安打/2001年
3 イチロー238安打/2007年
4 イチロー225安打/2009年
4 アルトゥーベ225安打/2014年
アルトゥーべが4位に割り込んでいるが、6位も2006年、224安打のイチロー。まさに「イチロー祭り」。つまりイチローは「今世紀、安打を打つことに最もモチベーションを燃やした男」だといえる。
セイバーメトリクスの考えが普及した今のMLBは、安打と四球は“同価値”とされる。ここまで安打にこだわる打者はもう出ないかもしれない。