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森保サッカーはノーマルだけど難解!?
トルシエ&黄金世代との一致と相違。
posted2019/12/16 20:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Getty Images
韓国・釜山でおこなわれているE-1サッカー選手権2019の香港戦で、日本代表が香港代表に5対0と快勝した。初戦の中国戦からは完全なターンオーバー。スタメンの7人が初代表で途中出場選手も含めると10人が五輪世代。スタメンのキャップ数は11人あわせても僅かに8という若いチームは、プレーのクオリティで香港を圧倒した。
香港は中国より力が落ちるとはいえ、韓国相手にセットプレーからの2失点しか許さなかったチームである。その香港に対し、A代表というよりもオーバーエイジ2人を加えた「五輪代表(仮)」は、プレーのスピードと正確性において中国戦先発のベテラン組以上の質の高さを見せたのだった。
たしかに58分に5点目を奪い、相手の気持ちを折った後に自分たちもペースダウンしてしまったものの、初めて国際Aマッチをプレーする選手たちがなかなかここまではできない。同じように新戦力が中心の中国や国内組主体の韓国とは、明らかにチームの完成度が違っていた。
チームを成長させながら選手も成長させる森保流。
「成長の可能性を持つ選手を招集しました。(Jリーグなどの)スカウティングの中で、これだけのことができるという選手に来てもらいました」と、試合後の会見で森保は理由を述べた。そして会見後の通路では、「さっきスカウティングと言いましたが、これまでやってきた積み上げの成果です」と訂正した。
実際そうなのだろうと思う。彼が言うところのコンセプトは選手たちに浸透しているからだ。
昨年、アジア大会(U-21代表)で当初は烏合の衆でしかなかったチームを、決勝までにディシプリンに溢れたチームに変貌させたように、短期間でチームを完成させる能力が彼にはある。だからまだチームを固めようとはしない。今はまだ、多くの選手を起用しながら全体のポテンシャルを上げていく時期と捉えているのだろう。
イビチャ・オシムやフィリップ・トルシエ同様に、練習でのコンセプトの落とし込み方がうまいのだろうと思う。同時にその過程で、彼は選手の成長も促す。チームの成長が、そのまま選手の成長につながる。
そう簡単ではないことを、森保はさり気なくやってのける。それが彼の“ノーマルフットボール”の正体でもある。