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アルベルティーニ化する橋本拳人。
浮き球パスのお手本は大久保嘉人!?
posted2019/12/14 09:00
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
Getty Images
デメトリオ・アルベルティーニ――。
いきなり何だという感じだが、主に1990年代にイタリア代表、ACミランで活躍したMFだ。若いサッカーファンには、もう約20年前の選手の話などわからないかもしれない。30代より上のファンにとっては名の知れた名選手。攻守のバランスに優れたボランチとして記憶されているだろう。
なぜ急にアルベルティーニの名を出したかといえば、最近、徐々に彼のプレースタイルに似てきている選手がいるからである。
FC東京所属の日本代表MF、橋本拳人。
「ちょっと待て!」という大きな声が、一部のサッカーファンから聞こえてきそうだ。アルベルティーニはボールを持てば好パスをさばいた華麗な一面を持つ。そんなMFに対して、「橋本はガツガツと守備をする選手だろ! 似ているわけない!」なんて意見が飛んでくるかもしれない。
そう、たしかに橋本は守備の人間だった。強度の高い球際プレー、ボール奪取力はJリーグ屈指の実力。だからすでにファンには既知であろう守備の話は、今回は一切しない。
「浮き球パス」で2人を語りたい。
この記事のテーマ、それは「浮き球」である。
ボランチやセンターバックから、前線の選手やスペースに向けて送られる、浮き球のパス。アメリカンフットボールのクォーターバックが送るタッチダウンパスのような、一気に局面打開を図り得点機を演出するプレーは、縦方向へのスピードが年々増す現代フットボールでも有効打と捉えられている。
ここで、アルベルティーニの登場だ。個人的に彼のベストプレーの1つとして鮮明に記憶している場面がある。
'94年アメリカW杯準決勝、イタリア対ブルガリア。あのロベルト・バッジョが2得点を挙げ、イタリアが決勝進出を決めた試合だ。そのバッジョの2点目をアシストしたのが、アルベルティーニだった。
相手ゴールからまだ30m強はあるエリアでパスを受ける。前方では、バッジョがブルガリアDFラインの背後に抜け出ようとしている。すると、アルベルティーニがボールをすくい上げるキックで浮き球のパスを送る。
相手DFがヘディングでクリアしようとするが、絶妙にカーブがかかっているボールには届かない。ピタリとトラップしたバッジョが、最後は右足ボレーでゴールに流し込んだ。