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連続写真で見る羽生結弦の4回転半。
最高の挑戦者は最高の被写体だ。
text by
長久保豊Yutaka Nagakubo
photograph byYutaka Nagakubo/The Sports Nippon
posted2019/12/16 11:40
羽生結弦が試みたクアッドアクセルの連続写真。このように見るとアスリートとしての際立った身体性を感じる。
最高の挑戦者は最高の被写体だ。
「回った!」と思った。
「降りた!」と思った。
「歴史の目撃者になった!」と思った。
だが彼の体は固い氷に叩きつけられた。4回転アクセル。高く跳べば、それだけ体を締め回転に入る動作が遅れる。距離を出せば回転速度が上がらず着氷は難易度を増す。
いずれにせよ途中で降りて3回転にするという選択肢はないジャンプ。悔しさを浮かべた彼は、またポーンと跳んで高さを確認した。そしてまた目をギラギラさせて右足を大きく振り上げ、振り下ろす。2度、3度。その度ごとに彼の体は叩きつけられて、その度ごとに悔しさを増幅させて立ち上がった。
見守る観客たちはわれわれと同じように息を飲み、転倒には小さな悲鳴を上げた。
ケガを心配して「ここでやる意味」を問いかけたのはボクだけではないはずだ。だが彼の挑戦がSPの2位発進で少し落ち込んでいたファンたちに勇気を与えたのは間違いない。彼にとってはクワドアクセルは夢ではなく、夜明けが近いことを示すことができた。
そしてボクたちカメラマンがうれしかったのは彼が失敗を悔しがってくれたこと。五輪2連覇、史上最高スケーターの呼称。すべてを手に入れたように見える彼に、まだ勝利への渇望、新技習得への執念があるということ。最高の挑戦者は最高の被写体なのだ。
カメラマン冥利に尽きるGPファイナル。
GPファイナルはカメラマン冥利に尽きる大会だった。ジュニア男子・佐藤駿の歓喜、アリョーナ・コストルナヤの“けしからん”美しさ、そして彼がいた。
彼の存在は新聞社系のカメラマンをおしゃべりにした。フリーだけで1000カット以上もシャッターを切って、実際に紙面に掲載されるのは写真部デスクやら、編集のえらい人やらのフィルターをくぐり抜けた1枚だけ。
そうした不満の解消に「オレの撮った羽生結弦」発表の場を自社のHPに求め、リンク先を明記した上でSNSで発信するカメラマンが増えた。