ファイターズ広報、記す。BACK NUMBER
広報目線で見るプロ野球の契約更改。
綿密な交渉とメディアとの駆け引き。
posted2019/12/10 12:00
text by
高山通史Michifumi Takayama
photograph by
Kyodo News
1年の最後であり、新しい1年の始まりの胎動を感じる時でもある。
北海道日本ハムファイターズの契約更改交渉が12月4日に完了した。
既に11月に終えていたファームの選手、またフリーエージェント権を有していた選手との契約締結を含め、これでほぼ来シーズンの陣容が固まった。
契約更改は編成責任を有すフロントなど交渉の席に着く球団関係者、その後の記者会見に出席するメディア以外は立ち入ること、触れることができない大切な行事である。その舞台には独特のならわしがあり、特別な空気に満ちている。一端を紹介する。
基本、午前から札幌市内の球団事務所でスタートする。目安の時間は1人、約40分間である。主戦場の札幌ドームの敷地内にオフィスはあるが、大半の選手が足を踏み入れるのは1年に1度、この日限りとなる。グラウンドとは違い、スーツ姿。慣れないアウエー感があふれる空間だけに少し緊張感もあり、所作もどこかぎこちない。
別室へと通されて、まずは査定担当者から評価内容等の説明を受ける。査定の担当者は1年間、チームに同行している。すべての試合をチェック。勝利数や本塁打数などの成績だけではなく、細かくプレーの内容を精査している。
査定のみならず、プライベートも共有。
投手であれば対戦打者なども指標にした投球内容、打者であれば進塁打などシチュエーションに応じた打席の結果、失策と記録はされたが安打性であった、と判断できる場合など多岐に渡るという。単純に数字化された成績だけを見た査定ではない、とのことである。
来季の契約内容を算出した根拠の事前説明を受けた後、正式交渉となる。双方で、すんなりと合意に達することができれば契約を更改し、その後はフロントとの意見交換や報告の時間に当てられるケースが多いのだという。例えば、夫人が出産間近であることなどプライベートな事案なども共有し、相互理解を深める貴重な機会でもあるようだ。