球体とリズムBACK NUMBER
マンCというよりリバプールみたい。
「楽しすぎる」マリノスが得た栄冠。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2019/12/09 11:50
鮮やかな攻守の切り替えとフィニッシュまでのスピーディーさ。FC東京相手の3-0快勝は優勝に値する美しさだった。
誰が出ても同じことができる強さ。
3月にサンフレッチェ広島から期限付きで加入した和田は今季、リーグ戦で8試合に先発していたが、ポジションはすべてサイドバックだった。
扇原のサスペンションと大津祐樹の負傷によって、(奇しくも)6月のFC東京戦以来となる出番を得た29歳は、久しぶりの本番、しかも優勝のかかる大一番にもまったく動じることなく、チームの生命線である配球役を巧みにこなした。
「やり方はわかっているので」と中盤でも輝いたMF兼SBは試合後に淡々と話し、指揮官も「彼は長く試合に出ていなかったけれど、我々のフットボールを理解している」と同調。誰が出ても同じことができるチーム──これもポステコグルー監督が目指してきたものだ。
そして、もう何度も語られてきた特殊なサイドバック。前節では右の松原健がナンバー10さながらにアシストを決め、最終節では左のティーラトンが同じエリアからの一撃で先制点を奪っている。シュートが相手に当たって入る幸運も、今のマリノスの勢いが生んだものと言っていい気がする。
GK朴一圭が語る失点減少の要因。
前半終盤にはエリキが5試合で6得点目となる追加点を奪い、後半には途中出場の遠藤渓太が長い独走から自信満々の切り返しでマーカーを外して駄目押しゴール。前者は8月の途中加入後にすんなりとチームに馴染み、アカデミー出身の後者は夏以降に7得点を記録するなど、殻を破った感がある。
彼ら前線の選手たちは、リーグ最多の68得点を導き出しただけでなく、シーズンを通して守備面でも重要な働きを披露した。
最後尾の砦となるGK朴一圭──最終節でも1対1を制すなど出色の出来だった。終盤の退場も「役割を全うしたに過ぎない」と指揮官──は、チームの失点が減った要因について、「チアゴ(・マルチンス)とシン(畠中槙之輔)を筆頭にDFの個人能力が高いこともありますが、それと同じくらい、前線からの激しいプレスが大きい。そこは監督がずっと口酸っぱく言い続けてきたことのひとつです」と肌身で感じたことを伝えた。