球体とリズムBACK NUMBER
マンCというよりリバプールみたい。
「楽しすぎる」マリノスが得た栄冠。
posted2019/12/09 11:50
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
15年ぶりの戴冠を目の前で見たくて、大勢のファンが日産スタジアムに集まった。その数、6万3854人──およそ6年ぶりにJ1リーグ戦の最多入場者記録が更新された。
当然そのなかには、わずかながらも優勝の可能性を残していたアウェーのFC東京のサポーターも含まれている。「日程くん」と呼ばれるJリーグのマッチスケジューラーの功績もある。
けれど、それだけの観衆を集めた最大の要因は、ホームの横浜F・マリノスの披露するフットボールそのものにあったと思う。2年目のアンジェ・ポステコグルー監督が築き上げてきた攻撃的なスタイルによって、日本屈指の名門は念願のリーグ優勝を達成した。
大敗の前回対戦で指揮官が語ったこと。
「我々には、遠い敵地にも駆けつけてくれる最高のサポーターがいる。彼らに楽しんでもらうためにも、エキサイティングなフットボールを展開する。最後まで諦めずにこれを貫き通すことが、何よりも大事だと私は考えている」
6月29日、敵地でFC東京に2-4で敗れた後、現在54歳のオーストラリア人指揮官はそう話した。この試合では多くのチャンスを作りながらも、結果に繋がらなかったが、約半年ぶりの再戦は完璧に3-0で制した。誰に何を言われようと突き詰め、練度を高めてきたアタッキングフットボールによって。
引き分けを挟んで10連勝で終盤戦を駆け抜けた2019シーズン。最終節の先制点も、今のマリノスを象徴する形から生まれた。
出場停止の扇原貴宏の代わりに中盤に入った和田拓也が中央でボールを受けると、内寄りの左サイドを駆け上がってきたティーラトンに預ける。そこからタイ代表のレフトバックがダイレクトで放ったミドルは、敵に当たって山なりの回転を生み、GKの頭上を抜いてネットを揺らした。