月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
東スポの「人面魚」に「桜を見る会」。
スポーツ紙はうしろからでも面白い。
posted2019/12/01 09:00
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
Kyodo News
侍ジャパン世界一、井上尚弥世紀の一戦、織田信成涙の提訴。今月もにぎやかなスポーツ新聞でした。そのなかで私はあの夕刊スポーツ紙の「動き」に注目していたのです。
「東スポ」である。
ここ数年の東スポはUFOやツチノコなどファンタジーあふれる未知の存在から「次に逮捕される薬物芸能人は誰だ」というシビアな未知の存在にシフトしている。前回そう書いた。
9月に「ネス湖でネッシーの調査」という一般紙でも話題になった件があったが東スポは社会面で小さく淡々と報じていた。どこか寂しかった。
しかし先月、
『ラグビーボール型 UFO出現』(10月22日付)
『世界初 人面ヤギ』(10月29日付)
という記事が。「人面ヤギ」は一面トップ。こういう記事は心に潤いと余裕を与えてくれる。
俺たちの東スポが帰ってきた!
すると、今月もきたのである。
『人面魚が中国進出!?』(11月15日付)
東スポの十八番である人面魚ネタだ。しかも中国進出という。
《中国で「人面魚」が発見され、大騒ぎになっている。ツチノコ、カッパ、クッシー、イッシーなどと並ぶ日本が誇る超A級のUMA(未確認生物)が、とうとう中国に進出したというのか。入手した映像を見ると、まさにかつて日本を沸かせた人面魚そっくりだ。あの人面魚が海を越え、時を超えて、中国の湖を泳いでいたのだろうか…。》(同)
そして東スポは“おさらい”をしているではないか。
《人面魚といえば1990年、山形県鶴岡市の善宝寺の貝喰の池にいた人面魚を、本紙を含め多くのメディアが取り上げ、一大ブームになったことがあった。》
文中に“本紙を含め多くのメディアが取り上げ”と書いているが、あのとき率先して大騒ぎしたのは東スポだ。だから注目されたんじゃないか。なんて奥ゆかしいんだ東スポ。
説明の横には当時大反響を呼んだ紙面の写真もあった。
「人面魚重体脱す」('90年6月)
「人面魚が笑った」('90年12月)
そうそう、これこれ。俺たちの東スポが帰ってきた! 平成当初の熱気を令和元年に思い出す。