ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
着々と強くなるベトナムサッカー。
トルシエが考えるW杯までの道。
posted2019/12/02 11:30
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Shuichi Tamura
U-19アジア選手権予選・グループJで日本と引き分け、ベトナムを来年10月にウズベキスタンでおこなわれる本大会に導いたフィリップ・トルシエは、所属する「PVFアカデミー」のテクニカルディレクターを続けながらU-19代表監督を兼任した。
PVFアカデミーとは、ベトナム最大の財閥であるであるビン・グループがハノイ市郊外に設立した育成施設で、最先端の設備はJヴィレッジをも上回っているのは本コラムですでに紹介したとおりである(https://number.bunshun.jp/articles/-/832105)。プライベートな施設だが、ベトナム協会との関係は深くゆくゆくはナショナルトレーニングセンターになるものと見られている。
アカデミーのすべてのプログラム作りと組織化を任されたトルシエが、どうして監督を兼任したのか。それもA代表ではなく、U-19という若い世代の代表の監督を。
彼の見据える先には何があるのか。日本戦の翌日、滞在先のホーチミン市のホテルで、未来へのパースペクティブをトルシエが語った。
ベトナムのサッカーを総合的に発展させる役割を。
――まずベトナムU-19代表監督に就任した理由から聞かせてください。
「それはベトナムサッカー協会が私に求めたからだ。と同時に、私がベトナムに来た際のプロジェクトは、PVFアカデミーのテクニカルディレクター(TD)の立場から2026年ワールドカップ、2024年五輪を見据えてベトナムサッカーを相乗的に進化させることだった。
最初の1年の間にクラブや協会との関係を深めていった。ベトナムがどのレベルにあるのかもよくわかった。アカデミーで私が主に関わってきたのが、16~18歳の子供たちであるからだ。
ベトナム協会からU-19代表監督のオファーを受けたとき、状況に鑑みて当然の申し出だと私は思った。それこそ私がここベトナムに来た目的でもあるからだ。だから即答で受け入れ、9月13日から仕事に着手した。自らのミッションという自負があったし、同時に私のやりたいことでもあった。
PVFではTDとしてサッカーの組織化と育成プログラムの作成に携わってきたが、ピッチからは久しく遠ざかっていた。しかし、このタイミングで私は再び監督となる機会を得た。チームを準備し、構築して、相手を分析し攻守にわたる戦略を練る。それらの仕事を通じて選手を育成する。それこそがベトナムで私に欠けていたものだった。
たしかに選手はそれぞれのクラブで育成されている。特に技術面はそうだ。しかし最も重要なのは、どうやって彼らをひとつにしてプレーさせるかだ。それこそが監督のミッションでもある。
ベトナム人選手は、技術面でも足りないものはたくさんある。経験ももっと必要だ。それらを踏まえたうえで、欠点をできる限り減らしていく方法を見出さねばならない。同時に彼らの特徴を生かし、その価値を知らしめる。そのために私の方法論を活用して、優れたパフォーマンスを実現する」