ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
着々と強くなるベトナムサッカー。
トルシエが考えるW杯までの道。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byShuichi Tamura
posted2019/12/02 11:30
U-18日本代表との一戦の翌日、リラックスした状況でインタビューに応じてくれたフィリップ・トルシエ監督。
日本のユース世代のリーグ参戦というアイディアも。
――アジア選手権までそう時間があるわけではなく、早く結論を出す必要があるのでは?
「本格的な活動を始めるのは3月だ。すでに私は30人の選手を把握している。さらに招集して伸ばしたい選手が20人程度いる。そこからなるべく早く40人のグループを作りあげる。その40人で準備をするわけだが、どう準備していくのか。
ひとつのやり方はクラブに委ねることだ。だが現状では若年層の全国リーグが整備されておらず、現実的とは言えない。他の方法は、代表がひとつのグループになって活動をしていくことだ。代表をひとつのクラブと見なして、そのクラブが日本やモロッコ、コートジボワール、ブラジル、フランスなどで活動する。そんなことがはたして可能なのか……と考えた。
2カ月前に日本に行ったとき、この代表チームを日本の大会――例えば(高円宮杯)プレミアリーグに参加させることを考えたりもした。田嶋(幸三)会長にもそのアイディアを話した。彼はイエスともノーとも言わなかったが、協会同士が技術提携している日本とベトナムの関係を深めていくうえでも、興味深いアイディアであるといえるはずだ。
参加のためにはベトナム代表が一定期間を日本で過ごさねばならない。それには福島のJヴィレッジがいいだろうと考えている。福島も再生が必要だ。ベトナムが福島をベースにすることでその助けにもなれる。私も良く知る福島という地域の活性化にもつながる。だからこそ本気で考える価値があると思っている。
ベトナムの発展を支援するパートナー関係が成立するとすれば、それは日本においてだと私は思っている。私が間に立つことで両者の繋がりが深まるのであれば、さらにこれからも協力し合ってやっていける。
昨日の試合は、両国がお互いを理解するいい機会だった。日本もベトナムが真剣に努力していること、進歩の過程にあることが分かったはずだ」
世界各地で発展している育成システム。
――ベトナムの若年層について少し語って欲しいのですが、PVF以外にもクラブや様々なアカデミー――ジャンマルク・ギウーのアカデミー(コートジボワールのアビジャンで大きな成功を収めた)のほかユベントスも新たに創設しました――が育成を行っています。
「その通りで、クラブは育成に力を入れている。私が望むのは、クラブと共同作業をしていく中で真の融和を成し遂げることだ。クラブと話し合って大会の日程を決める。発展のためにはクラブを援助していく必要がある。
今回の予選突破を活用して、クラブと意見を交換し、ユースの大会に関する問題を解決する技術委員会を設立できたらと考えている。何が問題であるかはよくわかっている。課題はどう解決していくかだ。例えばピッチの問題があるから、毎週末に試合を行うリーグ戦を開催できない。また長距離移動の問題もあり、そこから財政的な問題も生まれる。それらを解決しない限り進歩は望めない。代表に選手を集めて、合宿をおこなう方がずっと簡単だ。
現実に存在する問題を列挙し、協会が決断をしていくために、実現可能なプログラムを私は作らねばならないのかも知れない」