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中継されなかったU-18のベトナム戦。
トルシエ監督に聞いたドローの真実。
posted2019/12/01 11:30
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Getty Images
11月11日にベトナム・ホーチミン市でおこなわれたU-19アジア選手権予選・グループJの日本対ベトナム戦は興味深い試合だった。
ともにモンゴル、グアムに勝ち、勝ち点6で臨んだ最終戦。得失点差で上回る日本は引き分けでも本大会出場が決まる。対してベトナムも、ワイルドカード(各グループ2位の中から成績上位4チームに出場権が与えられる)を得るためには勝ち点1が必要と見られ、ともに負けられない試合であった。
力関係では圧倒的に日本。しかし結果は、日本の攻撃力を見事な守備戦術で封じ込めて引き分けたベトナムが、望み通りの勝ち点1を手にして来年10月にウズベキスタンでおこなわれるアジア選手権への出場に大きな望みを繋いだのだった。
日本には中継されなかったこの試合を、フィリップ・トルシエ、影山雅永両監督のコメントから振り返ってみたい。
「世界でもトップ12に入るのは間違いない」
<フィリップ・トルシエU-18ベトナム代表監督・試合後会見>
――ベトナムは勝ち点1を獲得し、本大会出場への可能性を開きました。この1ポイントは、戦術的な勝利であったと言えますか?
「勝ち点1を獲得すれば、予選を突破できるという確信はあった。しかしそのための戦略は、私自身にもよくわからなかった。勝ち点1の獲得を目標に試合に臨むと私が言うのはとても危険な状況だった。選手たちにはまず勝つことを考えろと言った。
日本の攻撃力が強力で、ベトナムは30%しかボールを保持できないことは分かっていた。70%は日本がキープする。そのうえ日本は選手の質が高く経験も豊富で、自信に溢れている。アジア最強チームだし、世界でもトップ12に入るのは間違いない。
逆にベトナムの選手たちは、心理面でもこの種の試合に慣れていない。本当に高いレベルのチャレンジで、日本はベトナムにとって高く険しい山だった。だから可能な限り入念に準備した。特に左サイド(日本の右サイド)でボールをどう処理するかに関して。1分1秒といえども、集中力を切らすことなく確固たる意志を持ち続けてプレーするために。
最後は自陣を守ることに徹した。目的は勝ち点1を得ることだったからだ。日本のストライカー(桜川)がレッドカードを受けて退場になった後の15分間、引き分けが最善の結果であることを両チームとも即座に理解した。そうした雰囲気が醸し出されて、10人の日本は敢えてゴールを奪おうとはしなかった。これがサッカーでもある。
われわれは最後までゲームをよくコントロールした。日本が11人で戦った60分間は力強い試合ができた。監督としてその点は誇りに思う。チームを始動させてひと月しかたっていないが、選手は本当によくやってきたしプロセスをよく消化した。アジアトップのチームに対してこれだけのことができて、満足しているし嬉しく思っている」