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「母国、ゴルフ、マドリー」が物議。
ベイルとレアルの愛は尽きたのか。
posted2019/11/30 09:00
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Getty Images
「愛憎相半ばする」という言葉があるけれど、ギャレス・ベイルがマドリディスタから注がれているのは、たぶん「愛が2、憎が8」くらいの割合だと思う。
いや、その見立てはちょっと甘すぎるだろうか。もはやサポーターの愛情も愛想も、ほとほと尽き果ててしまったのかもしれない。
ベイルが怪我で戦列を離れるのは年中行事みたいなもので、それに、たとえば挑発的なゴールパフォーマンスで物議を醸したりするのも、マドリードの街でスリに遭うくらい珍しいことではない。
ただ今回、彼が巻き起こした騒動は、少しばかりタチが悪かった。
10月の代表戦で例によって負傷し、マドリーではラ・リーガ8節のグラナダ戦(10月5日)を最後に、およそ1カ月間ピッチから遠ざかっていたベイル。にもかかわらず、ウェールズ代表から11月のEURO2020予選に招集されると、当たり前のように馳せ参じ、アゼルバイジャン戦(16日)とハンガリー戦(19日)にスタメン出場したのだ。
趣味のゴルフより下、にファン激怒。
そればかりか──。
『ウェールズ、ゴルフ、マドリー。この順番だ』
そう書き込まれたフラッグを笑顔で掲げたのは、EURO本大会出場を決めたハンガリー戦後だった。
もともとはマドリーOBのプレドラグ・ミヤトビッチが、クラブへの忠誠心に欠けるベイルを揶揄して語った言葉を、ウェールズ・サポーターが面白おかしく取り上げ、チャントにしたのが始まりだったという。
ほんのいたずら心だったのかもしれない。それでもアゼルバイジャン戦の前には、「ともに成長し、同じ言語を話す仲間とプレーするウェールズ代表での戦いのほうが、より多くの喜びを感じる」と臆面もなくコメントしているのだから、“確信犯”と言われても仕方がないだろう。
趣味のゴルフよりも下に見られたマドリディスタが、怒り心頭に発したのも無理からぬことだ。