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決してあきらめない──安齋HCが
語るブレックスの歴史、使命、責任。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byB.LEAGUE
posted2019/11/29 11:40
2017-18シーズンの途中からヘッドコーチに昇格した安齋。昨季は49勝11敗の東地区2位、チャンピオンシップセミファイナル進出へと導いた。
ブレックスの歴史そのもの。
何より安齋は、2007年の立ち上げ時にブレックスに加入し、選手、キャプテン、アシスタントコーチを経て現在のHCに至る、ブレックスの歴史そのものという存在である。
「初めからできていたわけではないんです」
そう断りをいれつつ、安齋は決してギブアップしないというカルチャーを築けた要因をこう分析する。
「何のために僕らがバスケをやれているのかを理解しているということです。好きなバスケットができて、給料をいただいていますよね。そんな状況で勝負をあきらめている選手がいたら、仕事を放棄していることになる。ここでは、そんなことは許されないというか……」
安齋は大学を卒業してから実業団のバスケットボール部で競技を続けていた時期がある。チームとしての練習は週に2回しかできなかった期間も、コピー機の営業をするため、バッシュではなく革靴のかかとをすり減らしていた時期もあった。
大塚商会の社員時代には、普段の練習に参加することすら認められないような空気のなかで苦悩していたこともある。
ファンやスポンサーがいてのプロクラブである。口うるさいと思われようが、自身の経験を引き合いに、ことあるごとにプロの使命を選手たちに伝えてきた。
選手とスタッフとの接点を設ける。
自ら語るだけではない。普段はそれほど交流のないブレックスの運営やマーケティングに従事するスタッフと、選手との接点を設けることもある。選手の自覚をうながすためだ。
例えば、ホームゲームの後のこと。安齋はあえて、選手とフロントスタッフの双方に声をかけ、食事に出かけることがある。選手たちは、試合後のクールダウンや取材を終えれば、すぐに食事に出かけられる。
しかし、クラブで働くフロントスタッフは、ブレックスアリーナの座席などの撤収作業がある。彼らが合流できるのは、選手よりも数時間は遅くなる。
「そういうのを見れば、選手も自覚しますよね。スタッフがそれだけの時間をかけて会場の運営や撤収をしてくれるからこそ、バスケットボールができているということを」
そうすることで、コートでの戦いに集中できるのは、スタッフやファン、スポンサーがいるからだと意識させるわけだ。