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決してあきらめない──安齋HCが
語るブレックスの歴史、使命、責任。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byB.LEAGUE
posted2019/11/29 11:40
2017-18シーズンの途中からヘッドコーチに昇格した安齋。昨季は49勝11敗の東地区2位、チャンピオンシップセミファイナル進出へと導いた。
みんなが1つになって取り組む。
これはファンとクラブとの関係だが、クラブとスポンサーの関係もそうだ。その重要性はことあるごとにクラブのスタッフや安齋の口から説明される。
「結局、チームだけがそういうことを考えていてもダメですし、会社側だけでやろうとしてもダメで。みんなが1つになって取り組んでいることが大切だと思うんです」
スポーツの試合のなかには、チームや選手の調子、ホームとアウェーの違い、審判の判定、心を折るような要素はいくつもある。
そこに屈しないでいられる理由の1つが、ファンやスポンサーとともに闘うという、明確なクラブの理念があるから。そして、選手たちがその考えを理解する環境が用意されている。
安齋は震えていた。
もう1つの理由は、「歴史」にある。
安齋には、アシスタントコーチ時代の忘れられない試合がある。
「Bリーグが開幕する前、NBL時代のリーグ戦、残り5分で僕らは日立(現在のサンロッカーズ渋谷)に20点近く離されていた試合があったのですが……」
現在もチームを引っ張るロシターや、トミー・ブレントン(Bリーグ初年度を終えたあとに退団)の背中をベンチから見ていた安齋は震えていたという。
タイトルに直結するファイナルやプレーオフならばまだ、わかる。ただ、あれはリーグ戦の1試合に過ぎなかった。にもかかわらず、ロシターやブレントンがフルコートでプレスをかけていく。
彼らの頭にはギブアップという概念は存在しないかのようだった。そこから縮められたのは5点程度で、試合をひっくり返せたわけではない。それでも最後まで彼らは足を止めなかった。
当時の彼らは、あくまでも助っ人としてやってきた外国籍選手だったのにである。
助っ人ゆえに、得点やアシストのような目に見えるような結果を残すことに執着しても、チームのカルチャーやプロ意識といった、数字に表れないことに無頓着でいるケースは少なくない。
でも、彼らは違った。当時はアシスタントコーチだった安齋は、そのメンタリティこそ、ブレックスが大切にしていくべきものだと感じていた。