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スター集結のデ杯でスペインが優勝。
“夢の球宴”新フォーマットの中身。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2019/11/27 11:00
新生デビスカップの初代王者となったスペイン。ナダル(右から2番目)らを擁した実力派軍団だった。
午前4時過ぎに試合終了したことも。
あらためて言うが、ホーム&アウェー方式はデ杯の醍醐味だ。
観客席の8割9割はホームのファンで埋まり、極端に片寄った応援になる。ところが、スタジアムを覆い尽くすホームチームへの応援をものともしない選手がいる。片寄った応援に反骨心を燃やすのだ。
逆に大声援が重圧となり、力を出せない選手も珍しくない。そうして、いくつものドラマが生まれた。
デイセッションが午前11時から、観客を入れ替えて午後6時からナイトセッション開始という日程にも批判が集まった。
夜の部の試合開始が遅れ、深夜に及ぶ対戦が続出した。1次リーグのカナダvs.米国戦は3試合目のダブルスの終了が午前4時を過ぎた。1週間の日程に試合を詰め込んだ弊害である。
大会は、批判を受けて、開始時間を昼夜とも30分ずつ早める異例の対応をとったが、根本的な解決にはほど遠かった。
ナダル、ジョコ、マリー参戦の意義。
ネガティブな話題を並べたが、試合内容は素晴らしかった。エルベールのように、国のため、チームメイトのためにプレーする選手たちは高いパフォーマンスを見せた。使い古された言葉だが、名誉と誇りをかけた戦いである。その質は応援の量には左右されない。
最終試合のダブルスに決着がもつれる対戦も多く、ツアーでは軽視されがちなダブルスが存在感を増した。ラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチといった、普段ダブルスをプレーしない選手がチームのために奮闘する姿も印象的だった。
マリーを含め、BIG4のうち3人がプレーしたことも特筆すべきだろう。若手を含めたスターがそろい、プロ野球で使われる“夢の球宴”という言葉が頭に浮かんだ。
この内容がテレビ中継や報道で広く伝われば、次回は国外からのファンも増えるだろう。運営、試合日程など改善の余地は多いものの、選手の奮闘が多くの不備を補った。大会はおおむね成功したと見ていい。