草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
原監督も提言するDH制導入の是非。
現役選手たちはどう捉えている?
posted2019/11/07 08:00
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
今シーズンのMLBを締めくくるワールドシリーズ(WS)は、不利との下馬評を覆してナショナルズがアストロズを下した。ナ軍が世界一に輝いたのは球団初の快挙だが、それにもましてファンの注目を集めたのが全7試合、ビジターチームが勝利したというWS史上初のプロセスであった。
サッカーほどではないにせよ、野球というスポーツはホームチームが有利にできている。球場の特性をより把握していたり、大声援に力を得たり、あるいは接戦になったときに後攻の得点確率が高かったり。実際、多くのチームの多くのシーズンで、ホームゲームの勝率がアウェーのそれを上回っていることでも実証されている。
ましてやWSにはさらなる要素が加わる。それは指名打者(DH)制である。ア・リーグの本拠地での試合では採用し、ナ・リーグ側では投手が打席に立つ。今回でいえば、アストロズの本拠地であるヒューストンでの第1、2、6、7戦はDH制、ナショナルズの本拠地、ワシントンでの第3、4、5戦は投手が打席に立った。つまり、レギュラーシーズン以上にホーム有利の条件がそろっていたのだが、勝利したのはすべてビジターだった。
DHを「損得」で考えると……。
長いWSの歴史で前例のないことが起こったのだから、偶然いや奇跡に近いのかもしれない。この機に乗っかって、野球ファンなら誰しもが考える「DH論」に触れてみる。
真っ先に出てくるのが「損得論」である。普段は打席に立たない投手が立ち、打撃に特化していることの多いDH型選手が、普段はつかない守りにつくか、ベンチを温める。
こうしたことを考えたとき、ア・リーグ(NPBではパ・リーグ)がナ・リーグ(セ・リーグ)に合わせる方が厳しそうだ。投手のバントや進塁打、DH型選手が守備につけば誰かがベンチに下がるし、守備につかなければ打線の中軸を打つDH型選手がベンチに下がる。打順の再編を迫られるわけで、対応することが多いからだ。
ナ・リーグ(セ・リーグ)がDH制にするときも、新たな野手が加わるわけだから打順は組み替えられるが、常識的に考えれば中軸を打つ選手が入ることはない。それでもシーズン中よりは全体の攻撃力がアップするわけで、当事者はポジティブにとらえられることだろう。