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大河正明と有森裕子が語り尽くす、
ユニファイドスポーツから見える夢。

posted2019/10/31 07:00

 
大河正明と有森裕子が語り尽くす、ユニファイドスポーツから見える夢。<Number Web> photograph by Ryuji Maekawa

左から、スペシャルオリンピックス日本の有森裕子代表、B.LEAGUEの大河正明チェアマン。

text by

田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

PROFILE

photograph by

Ryuji Maekawa

 スポーツを通して日本と社会をさらに元気に、真に豊かなものにしていく。この分野において近年、ひときわ精力的に活動しているのがバスケットボールのB.LEAGUEと、知的障害者の支援活動を行っているスペシャルオリンピックス日本だ。とりわけ昨年からは「ユニファイドスポーツ」と呼ばれる支援イベントを共催。大きな注目を集めている。
 スポーツが持つチカラ、そして両団体を結びつける想いとは何か。B.LEAGUEの大河正明チェアマンとスペシャルオリンピックス日本の有森裕子代表が熱く語り合った。

――Bリーグは発足当初から「B.Hope」というスローガンの下、非常に精力的に社会活動に取り組まれてきました。その発想や姿勢は、どこから生まれたのでしょう?

大河「私はBリーグに来る前に、サッカーのJリーグにいたんです。

 Jリーグは地域に根ざすということで、各チームが地域貢献活動に取り組んでいましたし、Bリーグも旧リーグのbjリーグが、同じ発想で活動をしていました。

 特にBリーグの場合は、ロゴのデザイン1つとっても、若い人を対象にしたプロモーション戦略を採っている。そういう若い人が、自発的に社会問題に正面から向き合っているという、このコントラストや意外性を大事にしたいと思って、『B.LEAGUE Hope』を始めたんです。

 バスケットボールには、3ポイントシュートがあるので、『地球(PLANET)』、『平和(PEACE)』、『人類(PEOPLE)』の3つのテーマをオフコートの3ポイントとして掲げ、国連で採択された持続可能な開発目標を実現していこうと。

 そこで参考にしたのはNBAの『NBA Cares(ケアーズ)』というプロジェクトでした。NBAでは10億20億という年俸を貰っているスーパースターが、自ら進んで社会活動をやっていますから」

――スペシャルオリンピックス(SO)は、スポーツを通じた知的障害者の社会参加を支援してこられました。Bリーグの社会活動は、どうご覧になっていましたか?

有森「私もJリーグの理事をやっていたのですが、日本のアスリートは社会にコミットしたくても精神的に余裕がなくて、自分の競技のことだけで手一杯になってしまう。特にオリンピックなどのアマチュア種目はそういうケースが多かったので、歯がゆさを感じていたんです。

 その点、Jリーグは大河さんが言われたように地域に根ざすという軸に沿って運営されていたし、Bリーグでも社会とつながっていく意義をしっかりと掲げてこられた。SOと同じ趣旨を持っていらっしゃるので、一緒に何かができるのではないかというイメージはすぐに湧きました」

みんなが一緒に活動できる喜び。

大河「ユニファイドゲームに関して私が何より共感を覚えるのは、障害を持っている方と持っていない方を分けるのではなくて、1つになってバスケットボールをやっていこうとする雰囲気ですね。ああいう場でみんなが楽しそうに頑張っている様子を見ると、本当に良かったなと思いますし」

有森「こうして一緒に活動させていただけるのは、すごく嬉しいですね。ユニファイドゲームのような舞台は、SOのアスリートたちの精神的な成長や、活性を促すことにもつながるんです。彼らの意識が年々高まって、さらに生き生きと輝くようになったことは、はっきりわかりますから。

 それと同時に、私は一緒に関わっていただいたBリーグの選手の皆さんも、微妙に変わってきたという印象を受けていて。初めは戸惑いもあったと思うんですが、最近ではすっと入ってきて自然にコミュニケーションを取り、一緒にプレーしてくださるようになってきている。ユニファイドゲームは一人ひとりの方が、自分の存在意義を改めて確認していただくための機会になっているのかもしれませんね」

【次ページ】 社会的役割を担っているスポーツ。

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