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宿沢さん、これが2019年の日本です。
スコットランドに挑み続けた30年。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byNaoya Sanuki

posted2019/10/16 20:30

宿沢さん、これが2019年の日本です。スコットランドに挑み続けた30年。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

ボールを持った選手は、全ての味方の視線を受けながら15人の相手に向かって先頭を走る。それがラグビーという競技だ。

「ブライトンの奇跡」の4日後。

 2015年9月23日。

 わずか4日前、「ブライトンの奇跡」は起きた。

 34-32。世界ラグビー界の巨象、南アフリカを日本が倒した。

 そして中3日で迎えたスコットランド戦。前半、日本は警戒を怠らないスコットランドを相手に健闘を見せる。

 しかし前半の早い段階で、エディーはヘッドセットを外していた。

「今日はダメだ」

 選手たちのワークレートが低い。傍目には拮抗しているように見えたが、指揮官には勝ち目がないと映った。関係者はこう述懐する。

「いつもは無線を通して怒号が飛ぶのに、その日のエディーはとても静かでした。ヘッドコーチ在任中、いちばんおとなしかったと思います」

 南アフリカに勝って4日後では、さすがのエディーも勝つためのレシピを作り上げることは出来なかった。

 それが2015年の現実だった。

ジェイミーを信じていい気がした。

 2019年10月13日。

 横浜国際競技場に近づくと、月が浮かび、柔らかな光が注いでいた。ビッグゲーム前の興奮というよりも、静かな自信を与えてくれそうな、柔らかな光。

 宿沢広朗と、エディー・ジョーンズという知将がW杯の大舞台で成し遂げられなかった打倒スコットランド。

 しかしこの夜ばかりは、ジェイミー・ジョセフという指揮官を信じていい気がしていた。

 その根拠は、「戦略の選択肢」と「人事」にある。

 キックによって生み出されるアンストラクチャーを標榜していたのに、アイルランド戦ではボールの支配率を高める「ポゼッション作戦」にあっさりと転換。その伏線の張り方には度肝を抜かれたが、いま、ジェイミーが作り上げたチームは、ポゼッションでも、キックでも、戦略を柔軟に使い分けられるようになっていた。

【次ページ】 走るチーム、スコットランド。

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