スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
宿沢さん、これが2019年の日本です。
スコットランドに挑み続けた30年。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNaoya Sanuki
posted2019/10/16 20:30
ボールを持った選手は、全ての味方の視線を受けながら15人の相手に向かって先頭を走る。それがラグビーという競技だ。
田村のPG失敗から始まった攻撃。
現実主義者は準備を怠らない。
この日もジェイミー・ジャパンの分析力に舌を巻いた。勝負を分けたのは、前半終了間際の福岡堅樹のトライだった。
実はこの前のプレーで、田村優がペナルティキックを外していた。難しい位置からのショットだったので、外したとしてもダメージは少ない。むしろこの時間帯ならば、相手陣深いところにいるので、相手から逆襲を食らうこともない。14-7で折り返せる。そう思っていた。
しかし、ジャパンの15人の集中力は途切れていなかった。
8対4の数的優位を活かしきるトライ。
スコットランドがドロップアウトから日本の右サイドにキック、この夜、日本はリスタートからのボール確保に難渋していたが、この時は38歳のトンプソンルークがクリーンキャッチ、すぐさまリーチマイケルが体を寄せてボールをキープする。
すると、左サイドにはアッという間に数的優位が確立されていた。
映像で見ると、8対4。
スコットランドは二線防御に2人を残してはいたが、明らかに日本の右サイドに人数をかけすぎていた。
ボールを素早く流大がさばき、田村は走り込んできたFWの稲垣啓太、堀江翔太らの背中を通し、中村亮土へパスを出した。そのボールはさらに姫野→ラファエレ ティモシーへと渡り、その時点で後ろをカバーしていたスコットランドの10番、ラッセルが数的な不利を埋めようとポジションを上げていた。
ディフェンスラインの裏はがら空きになった。
そこでラファエレが見事なゴロパントを蹴ると、「暁の超特急」という戦前の言葉を使いたくなるようなスピードで福岡が走り込んで右手で楕円球をつかみ、最後はフルバックのホッグをかわしてトライ。
前半終了間際に貴重な3トライ目をあげて、21-7として勝負を決めた。まさか、田村のPG失敗がこんな結果を生むとは、予想だにしなかった。
この夜、運も流れもジャパンに味方していた。