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ナダルが覆した「短命」の先入観。
フェデラー&ジョコと競い合って。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2019/09/12 12:30
タフマッチを制し、4度目の全米制覇を達成したナダル。その情熱はフェデラー、ジョコビッチとはまた違う魅力である。
新しい悪役からナイスガイに。
198cmの長身からのビッグサーブと、長いリーチを生かした守備力と破壊力は予測不能のショットを生み出す。ナダルの2セットアップから追いつき、最終セットも最後の最後までわからない展開にスタジアムを熱狂させた。あとでメドベージェフはこう振り返っている。
「僕がやることすべてにラファは答えを出してくるように感じていた。だから次々と新しいことにトライしたんだ。ネットにも出たし、ドロップショットやスライスも使った。やれることは全てやった。今持てる力を全部出し切って負けたのだからしょうがない」
今大会中は、ボールパーソンからタオルを奪い取るようなマナーの悪さを見せ、主審をなじり、ファンに対して扇情的にふるまい、すっかり<新しい悪役>というポジションを得ていたメドベージェフ。そうした出来事が嘘のように、決勝での彼はただただ才能豊かなプレーヤーで、表彰式でもとびきりのナイスガイだった。
偉大な選手は、こうして別の偉大な選手を育てるのかもしれない。
優勝まで一番年数がかかった全米。
表彰式に先立って、センターコートのスクリーンにはナダルの19回の優勝シーンが初優勝から順に番号とともに映し出された。
「1」は2005年の全仏オープン、「2」「3」「4」も続けて全仏だ。「5」に'08年のウィンブルドンがきて、「6」が'09年の全豪オープン。初めて全米オープンが登場するのは「9」――優勝までにもっとも年数のかかった大会だった。
初出場の2003年から数えて8年。全米オープンのサーフェスやボール、気候などあらゆる面でもっとも自分のテニスを順応させにくいトーナメントだったという。
クレーコート・プレーヤーの苦手は芝というケースが多いが、ナダルは芝での難しいフットワークが苦手ではないと感じていた。
フェデラーの下で丸3年間も2位であり続けたナダルが、ナンバーワンになるために、クレーコート以外でもフェデラーを破るために、次に狙いを定めたのはウィンブルドンだった。
ベースラインの中に入って、より攻撃的なプレーを身につけ、ネットプレーを磨いた。その結果、'06年の決勝進出で世界をあっと言わせ、次の年も準優勝して芝での可能性を証明し、翌年にはついに決勝でフェデラーを破って1位の座も奪い取った。