セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
コンテ就任でセリエAの覇権に異変。
冨安はルカクやC・ロナウドと対峙。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2019/08/24 11:30
新生インテルの象徴、コンテ監督。古巣ユベントスを知り尽くした男が、王者奪還を虎視眈々と狙う。
貪欲に補強する王者ユベントス。
だが、この8年間、あらゆるライバルを蹴落としてきた常勝軍団ユーベも、ただ手をこまねいてシーズンに臨むわけではない。
指導者としてセリエAでは前人未到の個人5連覇を成し遂げながら退任した名将アッレグリの代わりに、昨季のELを制したサッリ監督(前チェルシー)を招聘、9連覇とCL優勝を目指す。
サッリは2シーズン前にナポリを率いる敵将として、優勝まであと一歩のところまで王者を追い詰めた。かいた冷や汗はユベンティーノたちの記憶にまだ新しい。
フロントは今夏も貪欲に動いた。
守備陣に昨季CLで敗れたアヤックスの主将デリフトとSBダニーロ(前マンチェスター・シティ)を加え、中盤にはMFラビオ(前パリ・サンジェルマン)とMFラムジー(前アーセナル)を補強。
欧州の一線級で増強された新チームは、セリエA得点王と6個目のバロンドールを目指す惑星最高の男C・ロナウドとともにサッリ流の4-3-3へ順応を図る。
時間が必要なサッリスタイル。
不安要素は、サッリ自身が危惧している通り、彼の要求する高連動・高機動サッカーの習熟に時間がかかることだ。
いずれも3シーズンを率いたエンポリとナポリでも顕著だったが、チームが攻守のメカニズムを完全に会得するには最低でも数カ月を要する。
プロ選手経験がなく、地方クラブ生活が長かった無頼の指揮官サッリは、欧州の最上流クラブであるユベントスの価値観とは言葉遣いから着る物まで正反対の人間だ。クラブの伝統とサッカー観の異なる人材をあえて招いたフロントの英断は称賛すべきだが、一方で内部衝突のリスクも孕む。
新しいサッカーをモノにするか、その前に自壊するか。王者ユーベは今季も泥臭い戦いに臨む。