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地中海に浮かぶ小さなフヴァル島は、
“世界一のサッカー濃度”を誇る土地。
posted2019/08/24 18:00
text by
ギヨーム・バルーGuillaume Balout
photograph by
Facebook Nogometni Klub Hvar
世界で最も小さなサッカーリーグは、ギネスブックにも認定されたふたつのチームで覇権を争う「シリー諸島(英国コーンウォール州に所属)」のリーグである。だが、サッカーの“濃密度”でいえば、「フヴァル島」も負けていない。かれこれ50年というもの、アドリア海に浮かぶクロアチア領のこの小さな島は、世界一のサッカー密度を誇っていると言っていいだろう。なにしろ住民1000人強にひとつの割合でクラブがあるのだから。
『フランス・フットボール』誌7月16日発売号ではギヨーム・バルー記者が、知られざる“サッカーの島・フヴァル”の実情を伝えている。
監修:田村修一
選手達はオフにはウェイターやガイドになる。
フヴァルはアドリア海に浮かぶクロアチアの島である。
温暖な気候と風光明媚な土地柄に、ヨーロッパ全土から多くの観光客が訪れるが、同時にフヴァルはサッカーの島でもある。毎年10月から4月まで、冬の中断もなくおこなわれるリーグ戦には、1万人の島民すべてが熱をあげるのだった。
「リーグはブドウ収穫期が終わるころに始まり、観光シーズンが始まる前に終了する」と、最も多くのリーグタイトルを獲得しているNKフヴァルのセクレタリーを務めるアレクサ・フィリチェビッチは解説する。
「それ以外の季節――5月から9月までは、選手たちはウェイターやガイドとして働かねばならないからね」
クリークの奥に位置する「ポール・ドゥ・ラ・クロワスタジアム」では、芝生の斜面やスーパーマーケットのテラスに張り出す格好で設けられている観客席で、50人ほどの観客が試合を眺めている。
2001年からクロアチア協会は、この島のリーグをスプリト・ダルマチア郡の3部リーグ――国内リーグとしては最低の6部に相当するものとして認めている。ふたつの世界大戦の間にユーゴスラビアに出現し、1972年からリーグ戦の形態をとるようになったフヴァルリーグも、ユーゴ内戦が激化した90年代初頭は一時中断せざるを得なかった。'96年に再開したのは、所属する10クラブの首脳たちの強い意志によるものだった。