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コンテ就任でセリエAの覇権に異変。
冨安はルカクやC・ロナウドと対峙。
posted2019/08/24 11:30
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
セリエA開幕直前の20日、“コンテ”が辞任した。
といっても、職を辞したのはインテルの新指揮官アントニオ・コンテではなく、同姓のイタリア共和国首相ジュゼッペ・コンテだ。
内閣内部の不和は限界に達した。連立政権再編か解散総選挙か、地中海の長靴の形の国の政治的混乱は続く。
そして、何の波乱もなく8年が過ぎたセリエAの覇権争いにも、今季は混戦の気配が漂う。スクデット9連覇を目指す絶対王者ユベントスに、最強の挑戦者インテルが立ちはだかるからだ。
今季のインテルは、これまでのライバルたちとは格段に危険度がちがう。
何しろ新監督に就任したコンテは、8連覇の端緒となった2011-12年シーズンのユーベの優勝監督であり、現在よりはるかに劣った戦力でその後リーグ史上最多勝ち点記録を含む3連覇を達成した名将だ。
コンテ招聘に尽力したのは、これもユーベの敏腕フロントだったマロッタCEOで、彼は今夏の移籍市場で2億ユーロ規模の巨大補強を次々に敢行。
マンチェスター・ユナイテッドからクラブ史上最多の移籍金総額7500万ユーロを投じて獲得したFWルカクを筆頭に、元A・マドリー主将のDFゴディン、イタリア代表MFバレッラ(前カリアリ)ら実力者が次々に補強された。
戦術ベースも昨季までの4-2-3-1から3-5-2へ変更され、気の緩みを一切許さない闘将によってインテルの戦いぶりは一変する。
王者の裏の裏まで知るコンテ。
何より“老貴婦人”が恐れるのは、敵将となったコンテがOBとしてユーベの裏の裏を知り尽くすだけでなく、長いシーズンをどう戦うかといった戦略やノウハウに長けるエキスパートであることだろう。
ミラノに着任し、今季の目標を問われたコンテは8年前と同じ言葉を掲げた。
「限界は作らない。私のチームはいけるところまでいく」
つまり、闘将は“優勝のチャンスありと見れば俺は逃がさんぞ”と言っているのだ。
潤沢な“南京マネー”によってクラブの経営基盤は年々増強されている。9年ぶりの王座奪還へネラッズーロ(黒・青)の野心は膨らむ。