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「3人が甲子園に集まることはない」
あの夏の佐賀北OBが語ったこと。

posted2019/08/09 18:00

 
「3人が甲子園に集まることはない」あの夏の佐賀北OBが語ったこと。<Number Web> photograph by Miki Fukano

母校に集まった、真崎貴史、久保貴大、副島浩史。彼らの中には、2007年の記憶が今もはっきりと息づいている。

text by

日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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photograph by

Miki Fukano

 高校野球好きは、年を聞いただけで優勝校をすぐ言える。

 2007年は、すなわち佐賀北の年だ。

 高校野球好きの間でもおそらくはノーマークだった県立高校は、開幕試合での甲子園初勝利、延長引き分け再試合、私立強豪からのサヨナラと、ドラマチックな試合を立て続けに演じ、勝ち続けた。いつしか“がばい旋風”と呼ばれ始めた快進撃は、決勝戦での逆転満塁ホームランで完結した。

 マネージャーだった真崎貴史は、記録員としてベンチに入り、巻き上がる砂塵を外から見た。

「こんなところでようやりおるな」

 土煙の戦場から笑顔で戻ってくる仲間たちを迎え入れての率直な感想だ。

 グローブでもバットでもなく、ペンとスコアブックを必需品とした真崎は、厳密には「優勝メンバー」ではない。だが、なればこそ、客観の視点を持っている。

はっきり思い出せる西日のまぶしさ。

 甲子園での記憶として鮮明に残っているのは――?

 歳月の経過とともに霞む映像は、ただやけに白い。2回戦だ。14時55分に始まった宇治山田商業との試合は延長15回までもつれたすえ、引き分けに終わる。ゲームセットは18時ちょうど。夏の太陽はすっかり傾いていた。

 真崎は目を細める。

「西日がすごかったんです。ぼくたちは三塁側のベンチで」

 好守に、意外な一発と、数々のプレーに観衆が沸くなか、真崎は胸の高鳴りを抑えつつプレーのひとつひとつを記録した。そして12年が経ったいま、スコアブックの白いページに反射する西日のまぶしさだけが妙にはっきりと思い出せる。彼がたしかにそこにいたことの何よりの証明なのだろう。

【次ページ】 3人のOBが佐賀の監督として戦った。

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