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鹿島とメルカリの「挑戦的な身売り」。
100億円クラブへの期待と新しい経営。
posted2019/08/07 11:50
text by
川端康生Yasuo Kawabata
photograph by
J.LEAGUE
もしかしたらJリーグでは初めてではないだろうか。Jリーグに限らず、プロ野球も含めて日本のプロスポーツで初めての出来事かもしれない。
クラブ経営が行き詰っていたわけではない。親会社が経営不振に陥ったわけでもない。今回の出来事を「身売り」と表したメディアもあったが、その言葉がこれほど似合わない親会社の変更も珍しい。
あえて言うなら「挑戦的な身売り」。あるいは「前向きな身売り」。
いずれにしてもクラブの側が主体的に親会社を決めた――「鹿島アントラーズの経営権譲渡」の第一報を聞いて最初に感じたのは、そんな斬新な驚きだった。
2012年、住金と新日鉄の合併。
あらましを僕の理解(と想像も交えて)説明してみる。発端はアントラーズの親会社だった住友金属と新日鉄の合併である。2012年のことだ。
この頃、鉄鋼業界は激動期だった。'90年代から続く長い「鉄冷え」(不況)、アジアの新興国をはじめとして激変する世界情勢。そんな中で再編の動きが起き、まずNKKと川崎製鉄が、次いで住金と新日鉄が合併して「新日鉄住金」となった。
当時、対等合併と発表されたが、実質的には新日鉄による吸収という見方が一般的だった。そもそも両社の提携はこれより10年前、経営不振の住金に新日鉄が手を差し伸べたところから始まっていたからだ。
その後、同社は日新製鋼も吸収。海外メーカーの買収も進めるなど国際競争力をつけると同時に、子会社間の統合も行い、経営と組織の強化にまい進する。そして昨年、一連の改革の仕上げともいうべき、社名変更を発表したのである。
「2019年から新日鉄住金は日本製鉄になります」
昨年来、鹿島を訪れてそんな告知を目にするたびに「アントラーズにも変化が起きるかも」と僕は思っていた。