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鹿島とメルカリの「挑戦的な身売り」。
100億円クラブへの期待と新しい経営。 

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川端康生

川端康生Yasuo Kawabata

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photograph byJ.LEAGUE

posted2019/08/07 11:50

鹿島とメルカリの「挑戦的な身売り」。100億円クラブへの期待と新しい経営。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

新たなスタートを切った鹿島アントラーズ。「挑戦的な身売り」の先にはどんな未来が待っているのだろうか。

スポーツを支援してきた製鉄会社。

 改めて言うまでもなくアントラーズは住金サッカー部を前身とするチームである。新日鉄が主導権を握る新会社にとって特別な思い入れはない。

 誤解してもらっては困るから書き添えるが、新日鉄もスポーツの強力な支援者である。それどころか学生からスタートしたスポーツを社会人に広げるなど歴史的な貢献もしている。ちなみに前回の東京五輪で活躍したマラソンの君原健二や水泳の田中聡子などは新日鉄(八幡製鉄)の選手。サッカーでいえば宮本輝紀もそうである。新日鉄(八幡製鉄)のサッカー部は天皇杯も制し、草創期の日本リーグでは(4連覇した)東洋工業と優勝を争う強豪だった。

 しかし、平成になってからは釜石のラグビー部をはじめ、名門チームを次々と廃止。そこには合理化という直接的な理由だけでなく、鉄鋼マンだからこそのプライドのようなものもあったと思う。

 かつて「鉄は国家なり」といった。我々は国の礎を担っている。だから本業まい進。だから、やめるときはやめる。容赦なく運動部を廃部にした2000年前後の新日鉄にはそんな覚悟と迫力があった。

 それにエンドユーザー向けの商材を扱っている会社ではないから、プロチームを保有する意味がそもそもない。だから――日本製鉄へと生まれ変わるタイミングで、アントラーズとの関係も変わるかもしれない、そんなふうに予感していたのだ。

最適なパートナーの模索。

 一方、この間のアントラーズ。

 合併によって親会社が新日鉄住金となった2012年はクラブ初のOB監督、ジョルジーニョが就任。リーグは11位と振るわなかったが、リーグカップを優勝。その後もリーグ、リーグカップ、天皇杯を獲り、昨年はACLでも優勝。ついにアジアチャンピオンになった。

 この間、営業収入も40億円台から昨年度の73億円まで増収。チーム力だけでなく、クラブ力も確実に培っていった。どのタイミングで経営権譲渡の話が起きたのかはわからない。しかし、20冠を獲得してきた強いチームと、70億円を稼ぎ出す強いフロント。この両輪を備えていたアントラーズは慌てることはなかったはずだ。

 もしかしたら親会社との関係が住金時代とは変わる中で、クラブにとって最適なパートナー像をすでに模索し始めていたかもしれない。そう想像してしまうほど、アントラーズの事業は伝統的に先見性が高いからだ。

 たとえば、まだ現在のようなテクノロジーがない頃からCRM(顧客のデータ管理)を導入していた。マッチデー以外でもスタジアムで稼ぐためには? そのスタジアムにスタジオを作ったのは映像配信時代の到来より早かったはずだ。

 将来を見越しての計画的な取り組みはチーム作りだけでなく、事業においても同じなのである。だからアントラーズは強い。それも安定して強いのだ。

【次ページ】 「自然発生的」に生まれた出会い。

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