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鹿島とメルカリの「挑戦的な身売り」。
100億円クラブへの期待と新しい経営。
text by
川端康生Yasuo Kawabata
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/08/07 11:50
新たなスタートを切った鹿島アントラーズ。「挑戦的な身売り」の先にはどんな未来が待っているのだろうか。
“タニマチ経営”からの変化。
着目すべきはむしろ、彼ら新しいプレーヤーが日本のプロスポーツに変革をもたらしているということだ。
プロ野球のオーナーは、それぞれの時代を象徴する先端的な業種が務めてきたが、旗揚げ時の巨人、阪神、阪急、中日など新聞と鉄道会社から、映画業界が隆盛した時期の大映、松竹、東映、さらに大洋、ロッテ、ヤクルト、日本ハムといった食品飲料までは主に広告媒体として球団を保有してきた(鉄道は乗客による実利と沿線開発)。
言い換えれば、球団そのもので利益を上げるつもりはなく、あくまでも親会社の本業に活用してきたのである。
それが2000年代に入って変わった。
楽天、ソフトバンク、DeNAと新興IT企業が参入。球団そのもので利益を上げることを目指すようになった。つまり、それまでの“タニマチ経営”ではなく、“正しくビジネス”をするようになったのである。
Jリーグを儲かるビジネスに。
会見で日本製鉄側が述べた「将来にわたって世界と戦えるチームにするためにも、アントラーズは企業価値をさらに高めていかなければならない。そのためには素材産業である当社よりも、そうした事業に精通している新しいパートナーを迎え入れる方が得策だと判断しました」とは、まさにそのことを指している。
僕も大きく首肯する。そしてアントラーズなら、アントラーズがパートナーに選んだメルカリとなら、Jリーグを儲かるビジネスに変え、100億円クラブを実現できそうな気もする。
「挑戦的な身売り」と表したのはそんな期待があるからである。