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鹿島とメルカリの「挑戦的な身売り」。
100億円クラブへの期待と新しい経営。
text by
川端康生Yasuo Kawabata
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/08/07 11:50
新たなスタートを切った鹿島アントラーズ。「挑戦的な身売り」の先にはどんな未来が待っているのだろうか。
「自然発生的」に生まれた出会い。
メルカリとの出会いは2017年だ。
企画を出し合う。これまでとは違う新しい何かを生み出せそうか。ともに作業をする。その実行力はあるか。スピード感とクオリティは? 観察したはずだ。もちろん互いにだ。
会見で「どちらからということはなく、自然発生的に……」とメルカリの小泉文明社長は語っていた。こういうことは恋愛と似ている。何となく好感。そこから始まり、あるとき真顔で告白する。それまでの間に互いの気持ちはだいたい確認できているものだ。自然発生的とはそういうことだろう。
ただし、親の承諾は絶対必要。調べる。単年度赤字は出しているが、財務状況は問題なし。許可が出た。晴れて結婚……。
いや、すべて僕の想像だ。でもフリューゲルスとマリノスが合併したとき、当人たちは蚊帳の外だった。親会社同士の密談の結果を決定事項として伝えられたのだ。
今回はアントラーズが選んだ。しかも(報道によれば)アントラーズには他にも候補があったらしい。その中からクラブの未来に最適な、新たなパートナーを自ら選んだのだ。
主体的に親会社を決めた、とはそういう意味である。
メルカリの創業は2013年。
メルカリについても触れておかなければならない。
創業は2013年、と書いて、住金と新日鉄が合併し、今回の顛末が始まったとき、この会社がまだ存在さえしていなかったことに改めて驚く。明らかに新興企業である。そのことを不安視する声も経営権譲渡を巡る反応の中にはあった。
しかし、もしかしたらもう忘れているかもしれないが、楽天(三木谷浩史氏)がヴィッセル神戸の経営に乗り出したのは会社設立から7年目のことだった。そのヴィッセルがいまやリーグを牽引するクラブであることを思えば、会社に歴史がないことは何の問題でもない。そもそもIT業界自体が新しい産業なのだから「新興」なのは当たり前だ。