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優勝したジョコすら羨むテニス人生。
37歳のフェデラーは走り続ける。 

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byGetty Images

posted2019/07/16 11:50

優勝したジョコすら羨むテニス人生。37歳のフェデラーは走り続ける。<Number Web> photograph by Getty Images

過去、ウィンブルドン決勝で2度フェデラーを破っているジョコビッチ。2人の激闘は、当分の間、続きそうである。

「多分1つのショットを間違った」

 ファイナルセットは2ゲーム差がつくまで続くアドバンテージセット方式に代わり、今年から12-12で7ポイント先取のタイブレークで争われる新ルールが採用された。

 その最終セット、フェデラーが7-7でブレークし、「サービング・フォー・ザ・チャンピオンシップ」を迎えた。15-15から2本連続でエースを叩き込み、40-15。時計はすでに4時間を過ぎており、たとえ相手が不屈のジョコビッチとはいえ誰もがフェデラーの2年ぶり9回目のウィンブルドン優勝、21回目のグランドスラム優勝を確信していた。

 そこでいったい何を間違ったのか。

 マッチポイントからの4連続失点に、フェデラーは「多分1つのショットを間違った、どのショットかを特定するのは、あなたたちに任せるよ」と自嘲するように言った。結局、12オール・タイブレークに突入し、息を吹き返したジョコビッチがものにした。

 ウィンブルドンでチャンピオンシップポイントを握りながら敗れたケースは、オープン化の随分前、1948年まで遡る。

 テニス史上初の12オール・タイブレークでの敗者ということもできる。これほどありがたくない記録を、よりによって<史上最強>と謳われるフェデラーが作ったことはなんとも皮肉だ。

皮肉に満ちる、フェデラーの試合の数字。

 皮肉といえば、今年ここまで15勝3敗という高い勝率のタイブレーク成績を残していたフェデラーが、最終セットの12オール・タイブレークを含めて全てのタイブレークを失ったこと、トータルのポイント獲得数で14ポイント上回っていたこと、ジョコビッチの2倍近くになる94本ものウィナーを決めたこと、何もかもが皮肉だった。

 過去にもウィンブルドンの決勝でフェデラーを2度倒し、その戦い方を知り尽くすジョコビッチの経験と野望が、こうしたいくつもの皮肉を生んだのだろう。

【次ページ】 フェデラーの<10年>のクオリティの高さ。

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