テニスPRESSBACK NUMBER
優勝したジョコすら羨むテニス人生。
37歳のフェデラーは走り続ける。
posted2019/07/16 11:50
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
1年前のウィンブルドン初日、前年優勝者のロジャー・フェデラーは、囁かれていた噂通りにナイキからユニクロのウェアに装いを変えてセンターコートに颯爽と姿を現した。
天候に邪魔さえされなければ、初日のセンターコートの第1試合は午後1時の入りと決まっている。フェデラーの登場とともに、ユニクロはこの衝撃的な契約を正式に発表する予定だった。フェデラーは、そのニュースの配信時刻を13時8分にしてほしいと要望したという。
「8」はフェデラーのラッキーナンバーで、これは嘘のような本当の話だ。
試合のコートにはいつも8本のラケットを持ち込み、彼が長年の代理人とともに2013年に立ち上げたマネージメント会社の名前は「Team 8」だ。2年前にウィンブルドンV8を達成したときには、「8」に自分の顔イラストをデザインしたロゴ入りの限定モデルのラケットを8本、チャリティー用にオークション販売した。
それほど「8」にこだわる理由は驚くほど単純で、8月8日生まれだからだというから、“神の子”とまで呼ばれるフェデラーも意外に“人の子”らしい。
ユニクロが結んだ10年契約の意味。
それにしても、この契約の発表にこだわりの「8」をもってきたというのは興味深い。
驚愕の契約内容は10年3億ドルと報じられたが、当時36歳のフェデラーとの10年契約には驚かされた。
引退後も睨んでのことだとしても、あと2、3年の現役生活のためにこの契約は結ばれないだろう。ただ現役を続けてくれればいいというものでもないはずだ。
新ブランドとともに歩む10年の間で、どれだけ長くトップで戦い、何を成し遂げるか――「13時8分」のエピソードには前人未到の領域に挑むフェデラーの意欲、決意、覚悟が表れていた。